万物流転 | ナノ
27.ふたりで3
話しながら歩いて来たものなので、自分たちが今どこの廊下を歩いているのかが分からなくなってきた。けれど、私達と真逆の方向から両手にお菓子を落としそうなほどいっぱいに抱えているルーピン教授に声を掛けられて、ここがルーピン教授の自室のある階だと言うことだけは分かった。

「さっき六年生の女の子達から、お菓子をね。ほらご覧!
 こんなにもたくさん貰ったんだよ。一緒に食べないかい?」

「いいんですか?ルーピン先生」
「折角だから、お言葉に甘えさせて頂きますね、教授」

ルーピン教授はとてもにこにことしていらっしゃった。「さぁさ、入って。適当に座ってふたりとも!」ルーピン教授はヤカンを探しながらそう言った。ハリーは、水魔の入った大きな水槽に目を奪われていた。

「先生、あれは?」
「あぁ。彼らはグリンデロー、水魔だよ」

「ルーピン教授、私が淹れましょう」
「あぁ、ありがとうレイリ。助かるよ」

私はルーピン教授が荷物の山から見つけ出したヤカンと紅茶のティー・バッグを受け取って、奥の給湯室へと下がった。ハリーは部屋へ入ってから、教授の様子を見ているようだったし、なんだか言葉の節々がぎこちなかったから、積もる話があるのだろう。私はなるべく時間をかけて、作業に取り掛かった。

「それは、君がもっとも恐れているのが『恐怖そのもの』だということなんだ。
 だから君のまね妖怪は、ディメンターに変身したんだろうね」

「へぇ。ハリーもディメンターに変身させたんだ」

「お、タイミングがばっちりだねレイリ。
 ちょうど今、話に区切りが付いたところなんだよ」

「エ!僕もってことは…もしかして先輩も?」

「そうだよ。私の時もディメンターになったんだ。
 そうですよね、ルーピン教授?」

ポッと頬をピンクに染めた教授は「あぁ。彼女の時もボガートはディメンターに変身したんだ」とハリーに言って聞かせた。その間に、三人分の紅茶をカップに注ぎ分け、私はハリーの隣りに腰を下ろした。ルーピン教授は砂糖のブロックを五つほどポチャンと紅茶へ落として溶かして口に含んだ。

私は三つ入れて溶かすためにティースプーンで混ぜた。ハリーは一つだけコロンと入れて紅茶が波立った。私がやっと一口飲んだ時、前のソファーに座っているルーピン教授は、六年生の女子生徒から貰ったと言うカエルチョコに手を伸ばしていた。

20130817
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