万物流転 | ナノ
26.ふたりで2
三年生から上の学年の生徒達がうきうきとホグズミードへ行ってしまった談話室は、一年生と二年生でいっぱいになることを長年の経験で知っていた私は、朝食後フレッドとリーとともに寮へ戻って、図書館へ行く準備を整えた。

友人達を階段で見送って、たくさんの蔵書の眠る図書館へと向かう。私はそこで、昨日一昨日の晩にスネイプ教授から指南を受けた脱狼薬についてを自主的にレポートにまとめようと思ったのだった。私は一点集中型ではないが、ひとたび集中すれば作業はあっと言う間に片付くというタイプの人間だった。

ガリガリ、ガリガリと同じテーブルで勉強をしていたレイブンクローの七年生も真っ青な羽ペン捌きで、開始五分でレポートを仕上げてしまった。スペルミスがないのを確認してから、後で教授に添削してもらおうと思いくるくると丸めて鞄にしまった。

図書館を出て道なりに歩いていると、初めてのホグズミード村へも保護者のサインがないだけで出かけられず、可哀想なハリー・ポッターが管理人のフィルチに「何をしている?」と目を付けられ、疑るような声で言われていた。

「別に何も…僕は図書館へ行こうとしてただけで」
「嘘をつくな!ひとりでこっそり歩き周りおってからに――」

「あぁ、ハリー!探したよ…図書館で待っていたのに」
「レイリ先輩!」

「フィルチ先生、彼を見つけて下さってありがとうございます。
 私がいくら待っても図書館に姿を現さないので、てっきり校内で迷子になっていたのかと…」

ぱちっとハリーにウィンクを飛ばしながらそう言えば「そうなんです!僕、図書館でレイリ先輩と一緒に勉強しようと思っていて」と、ほっとしたような顔をしながら管理人に話した。愛猫を撫でながら低く唸ったフィルチ氏は、しぶしぶ去っていった。

彼の後ろ姿が、廊下を曲がって足音が遠ざかっていったのを確認して私達はぷっと笑った。それから私達は図書館へも談話室へも向かわずに、廊下をふらふらと歩くことにした。人の少ないホグワーツは、なんだかクリスマス休暇の時のことを思い出させる。

「…先輩、聞いてもいいですか?」
「なに?私に答えられることなら、よろこんで」

「…もしかして、先輩も…その、僕と一緒で…」
「そうだよ。許可証がないから、ホグズミードへ行けないんだ」

ハリーは驚いたような…でも、ちょっと嬉しそうな微妙な顔をした。私は歩きながら、ぽんぽんと彼のくしゃくしゃの黒髪を撫でた。「うちの保護者、ちょっと特殊でね。仕事が忙しくて滅多なことでは近くにいないんだ」と説明すると、ばつの悪そうな声で「そうだったんですか…」と彼は言った。

「あ、気にしなくていいよ。私にとっては当たり前のことだし…
 それに、あの人からは今回のクリスマス休暇に会えるって梟便が来たから」

私がほんのちょっと、付け足すように言えば、ハリーはいつもの笑顔を浮かべた。

20130817
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