万物流転 | ナノ
25.ふたりで
その日は今年最初のホグズミード村行きの日であった。昨夜は許可を貰って夜遅くまで、約束通りにスネイプ先生直々に脱狼薬を指南して頂いていた。同室のアンジェリーナに「お土産なにがいい?」と揺すり起こされるまで、私はずっと眠っていた。

アンジェリーナは、私がホグズミード村へといけない本当の理由(かと言って、そんなに重々しい理由ではないが)を知っている者のうちのひとりである。私は彼女の好意に甘えて、しばしばハニーデュークスというお菓子屋さんでキャンディーやらチョコレートやらをお土産に買ってきてもらっている。

大広間へ行くと珍しく早起きの双子とスクランブルエッグをつつくリーとが、今日のホグズミード村行きでゾンコの悪戯専門店では何を買うかのリストを作成していた。楽しそうに話す双子の正面でリーの隣りに腰を下ろすと「おはよう、レイリー」とフレッドに言われた。

フレッドは私を呼ぶ時、語尾を伸ばす癖があるんだよな。そんなことを思いながら「おはよ」と返せば、リーから「いつになく目の下に隈できてんぞ」と彼の親指で目の下の皮膚の薄い部分を数回マッサージされた。

「いつになく、お兄ちゃんだね。リー」
「そうか…?」

「とりあえず、その手を離そうか…ジョージからの視線が痛い」
「わ、わりぃ…レイリ」

リーは、私の顔を両手ですっぽりと包んでいた手をパッと離した。弟のロンくんにそっくりな目で、私とリーの一部始終を凝視していたジョージは、隣りの片割れによってエルボーを食らわせられるまで意識が戻ってこなかった。

私が心配になって、机越しに右手(最近になってやっと骨がくっ付いたのさ!)を伸ばして、赤毛をはらって額に触れると、弾かれたように立ち上がって「僕の気も知らないで!」と目を潤ませて大広間を出て行ってしまった。

「え、ジョージ大丈夫なの?私なにかした?」
「あー、えっと…多いに君はやらかしたんじゃね?」

「あいつって、たまに本当に俺と双子だったのかなって思うぜ」
「確かになぁ…なんたってジョージはピュアっ子だからな!」
「そうだな。純粋って書いてピュアって読むタイプのピュアだもんな」

顔を合わせてけらけら笑うフレッドとリーは、なんだか年上のような雰囲気が漂っていた。そして、プレーンのパンを咀嚼しながらジョージの奇行を不思議に思っているのが顔に出ていたらしい。

そんな私に向かって「レイリはまだ何も知らなくていい」とリーが言って、付け加えるようにフレッドが「でもレイリを狙うにしても、こんな鈍感ちゃんだから敵が多そうだぜ」と今は空席になってしまった椅子を見ながら溜息まじりに言ったのだった。

20130817
title by MH+
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