万物流転 | ナノ
24.せいなる3
「それにしても、どうして教授が脱狼薬を?もしかして…」

「バカ者!我輩が飲む訳なかろう!我輩直々にとある愚か者に作ってやっているのだ…とでも言っておこう」

私が悪戯に目を光らせて言えば、叩き付けられるように教授から「バカ者!」と怒鳴られた。手に持っていた始末書は、私が握っていたせいで所々しわが出来ていたが、教授は気にせず受け取ってぱらぱらと中を確認し、一番上の紙にサインをしてそれを私に差し出した。

ローテーブルの上の始末書を、教授は杖を一振りして指定の引き出しの中へと片付けた。じろり。もう用件が済んだなら出て行け…とでも言うように、その黒目は私を見ているが、私は膝の上の手をぎゅっと握り教授を見上げた。

「あの、スネイプ教授。…私、脱狼薬に興味があるんです。
 私が卒業するまで、私をどんなに扱き使ってもいいので…その、」

「なんだね。…最後まで言ってみろ。
 我輩に扱き使われることを覚悟での願いなら、聞き入れてやらんこともない」

「もし良ければ、教授が脱狼薬を調合するのを見学させて下さい!」

緊張で、顔が熱を持ち始めるのがよく分かる。けれど、スネイプ教授から目を逸らしたら負けだと思った。

目の前の教授は一瞬だけ、何を言い出すんだこいつは…と疑るような目をしていたが、次第に思案顔(きっと彼の頭の中では、私を扱き使っている自分のイメージ映像が流れているに違いない)になり「よかろう」と不敵に微笑んだ。

「どうせ我輩を見学するなら、作れるようになれ」
「え、教授…それって!」

「我輩が直々にお前に教えてやると言っておるのだ、バカ者!」

「あ、ありがとうございます、スネイプ教授!」
「ッ! おい、ウチハ!!」

嬉しさのあまり、私はスネイプ教授に飛びついた。ぎゅうぎゅうと彼の細い腰に手を回して、顔を彼の薄い胸板に押し付けると上から焦ったような怒った声が聞こえてきた。

彷徨う教授の両手がバシッと私の肩に乗せられ、私の身体と彼の身体がベリッと剥がされた時、ちらっと見えた教授の顔はかすかに紅潮していたのだった。

20130817
title by MH+
[top]