万物流転 | ナノ
22.せいなる
ルーピン教授に話を聞いてもらった次の日から、私は随分と心が軽くなったのを感じる。それに、今朝は滅多に手紙を寄越してこないとある人から監督生になったことを祝う手紙が届いたし、私は朝からるんるんだった。

黒い羽の梟が一匹、配達の時間に私のところへ飛んで来て深い紫色の封筒を落としていった。裏返して見ると、差出人の名前のところに金色の文字で『Constant vigilance!』と書いてあった。その言葉をみて、差出人が誰かぴーんと来た私はいそいそと封筒を破り手紙を読んだのである。

午前の授業を終えて昼食をとっている時も手紙のことを考えていた。(クリスマス休暇に、宿で会おうだなんて…)私とその人が会うのは、何年振りだろうか。思い出すのは、その人に拾われた時のことばかりで、おおよそ最後に会ってから五年振りだろう。ちょっとだけ、クリスマス休暇が待ち遠しくなった。

午後の授業も済み、同じ五年生の監督生であるコンラッド・アダムズと寮監のマクゴナガル女史のところへ二週間分の始末書を提出しに行った。主にこれは管理人のフィルチ氏と、四寮の寮監督の先生に共通して私達監督生が提出しなければならないもので、授業や日常生活での生徒の様子を書いたものである。

アダムズは、スリザリン寮監のセブルス・スネイプ教授が大の苦手で、彼のところには始末書の提出に行きたがらない。だから私がいつもスネイプ教授とマクゴナガル女史のところへ行く。そして彼が残った二寮とフィルチ氏の元へ提出をしに行くと言うのが通例だ。

今回はたまたま二人で彼女の元を訪れ、マクゴナガル女史の部屋の前で分かれて私は地下牢のスネイプ教授の部屋を目指した。城の中にいるのに、いつも寒いくらいに涼しい地下牢は鬱々たる空気が流れている。

硬い扉をノックして口を開いた。「教授。グリフィンドールの」続きを言う前に扉が開き、大鍋をかき混ぜている教授の黒い目と視線が交差する。

「レイリ・ウチハか。…いつもの書類だな」

「はい。二週間分の始末書を提出しにきました。
 あの…教授は今お忙しいようなので、また後ほど伺いますね。
 …失礼します」

「待ちたまえ。出直す必要などない」

教授は火にかけていた大鍋を火から外して、私を招き入れた。さぁどうぞ、と言わんばかりにいつかと同じように私をソファーに座らせた。ぐつぐつと大鍋の中の魔法薬が煮える音が聞こえる。私は、なんとなく教授の調合する姿を眺め、教授の机の上に花の刺さった花瓶があるのを、何処かミスマッチに思った。

20130817
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