21.こわれる3
でもね、相応しいとか、相応しくないとかは、自分が決めることじゃないんだ。ルーピン教授の言葉が自然と頭の中で反芻する。もしかしたら教授は学生時代の自分に私を重ねていたのかもしれないと、彼の目を見て思った。それから、ルーピン教授は清潔な白いハンカチで私の目元を優しく拭い、パッと私を立たせて下さる。
わざとらしい咳払いをして「あー、急に抱きしめたりして悪かった」と顔を赤くして謝ったあと「さて、わたしたちも大広間へ行こう」と私の背中を押して教室を出た。大広間へと向かう道中は終始無言で、少しだけ気まずかった。ルーピン教授の左肩が私の涙で濡れていた。
「おい、見ろよ。あのローブのざまを」
大広間の入り口まで来た時、そんな心ない声が聞こえてきた。キッと睨み付ければ、そこにいたのはやはりスリザリンカラーのローブに身を包んだドラコ・マルフォイとその取り巻き連中がたむろしている。そういえば、ロンくん達が談話室の一角で「マルフォイのやつルーピン先生が近くを通ると、聞こえよがしにヒソヒソ言ったりするの気に入らないよな」と話しているのを聞いたことがある。
ルーピン先生には、今さっきまで私自身の話を聞いてもらった恩があるし、何より私はこの学期が始まる時に「次に私の前でルーピン教授に失礼な言動をしたらしょっぴいてやる」と決意をしていた。今回はその絶好のチャンスじゃないか!
「ミスター.マルフォイ。
私は一度あなたに忠告したはずですが?」
「なっ!なんでお前がルーピン…先生、なんかと一緒に!?」
「嘆かわしい…あなたの脳は、トロール以下ですか?どうして一度注意されたことがしっかりできないのです」
私は卑怯にも、首からつり下げた右腕を撫でながら溜息を吐く。その様子を見た目の前のマルフォイは「うっ」と声を詰まらせ、彼のすぐ傍に立つパンジー・パーキンソンは「その腕を引き合いに出すなんて!それは、あんたが勝手に飛び出してきたからでしょうが!」とキーキーとした高い声で言った。しかし、私は彼女の声を無視して冷たく言った。
「スリザリンから5点減点します。
次、先生を貶めるようなことを言ったら口縛りの呪いをかけますから。あなたのトロールのような頭の中に、よーく覚え込ませておきなさい!」
顔色を悪くしたマルフォイ軍団は、その場から立ち去った。私の後ろでその光景を見ていたルーピン教授は「なにもわたしの為にそこまで…」と眉を下げていたが「先生の為じゃないです。私の為です」とぴしゃりと言うと、ぽんぽんと頭を撫でられた。
これじゃあ、ただの駄々っ子みたいだね、せーんせい。
20130816
title by MH+
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でもね、相応しいとか、相応しくないとかは、自分が決めることじゃないんだ。ルーピン教授の言葉が自然と頭の中で反芻する。もしかしたら教授は学生時代の自分に私を重ねていたのかもしれないと、彼の目を見て思った。それから、ルーピン教授は清潔な白いハンカチで私の目元を優しく拭い、パッと私を立たせて下さる。
わざとらしい咳払いをして「あー、急に抱きしめたりして悪かった」と顔を赤くして謝ったあと「さて、わたしたちも大広間へ行こう」と私の背中を押して教室を出た。大広間へと向かう道中は終始無言で、少しだけ気まずかった。ルーピン教授の左肩が私の涙で濡れていた。
「おい、見ろよ。あのローブのざまを」
大広間の入り口まで来た時、そんな心ない声が聞こえてきた。キッと睨み付ければ、そこにいたのはやはりスリザリンカラーのローブに身を包んだドラコ・マルフォイとその取り巻き連中がたむろしている。そういえば、ロンくん達が談話室の一角で「マルフォイのやつルーピン先生が近くを通ると、聞こえよがしにヒソヒソ言ったりするの気に入らないよな」と話しているのを聞いたことがある。
ルーピン先生には、今さっきまで私自身の話を聞いてもらった恩があるし、何より私はこの学期が始まる時に「次に私の前でルーピン教授に失礼な言動をしたらしょっぴいてやる」と決意をしていた。今回はその絶好のチャンスじゃないか!
「ミスター.マルフォイ。
私は一度あなたに忠告したはずですが?」
「なっ!なんでお前がルーピン…先生、なんかと一緒に!?」
「嘆かわしい…あなたの脳は、トロール以下ですか?どうして一度注意されたことがしっかりできないのです」
私は卑怯にも、首からつり下げた右腕を撫でながら溜息を吐く。その様子を見た目の前のマルフォイは「うっ」と声を詰まらせ、彼のすぐ傍に立つパンジー・パーキンソンは「その腕を引き合いに出すなんて!それは、あんたが勝手に飛び出してきたからでしょうが!」とキーキーとした高い声で言った。しかし、私は彼女の声を無視して冷たく言った。
「スリザリンから5点減点します。
次、先生を貶めるようなことを言ったら口縛りの呪いをかけますから。あなたのトロールのような頭の中に、よーく覚え込ませておきなさい!」
顔色を悪くしたマルフォイ軍団は、その場から立ち去った。私の後ろでその光景を見ていたルーピン教授は「なにもわたしの為にそこまで…」と眉を下げていたが「先生の為じゃないです。私の為です」とぴしゃりと言うと、ぽんぽんと頭を撫でられた。
これじゃあ、ただの駄々っ子みたいだね、せーんせい。
20130816
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