万物流転 | ナノ
18.みぎうで5
三年生の魔法生物飼育学で一体何があったの?と言わんばかりの五人に今日あった出来事を話せば、アンジェリーナとアリシアは「あの腰抜けシーカーが」と爪先から頭の天辺まで震え上がりそうな低い声を出して、スリザリンのテーブルを睨み付けた。

フレッドとジョージは、彼らが思い付く限りのマルフォイに対しての悪口をリーに止められるまで延々と口に出していたし、リーは「まぁ、お疲れさんだったなレイリ」とまるでお兄ちゃんのような顔をして私の黒髪に手を滑らせた。

「でも、災難だったねぇレイリ。貴女そっち利き腕でしょ?」
「まだ傷は痛むの?大丈夫?」

「アンジーもアリシアも心配しすぎだよ、傷は平気。
 だって、マダム・ポンフリーに処置してもらったもの」

机を挟んで前に座る二人は、先ほどスリザリンを睨み付けていた凶悪な顔を改め、心配そうな顔つきで私に尋ねた。私の正面で彼女らの隣りのリーも眉を下げて私の話を聞いている。

「聞き手がそのような状態では」
「お嬢様のお食事には補助が必要かと存じます!」
「お、双子にスイッチが入ったな」

「え…大丈夫だよ。左手で食べられるし」
「けれどもお嬢様」
「貴女様のお皿の周りをご覧下さい!」

芝居がかった口調で私の皿を指差すフレッドに、皆が目を向けると豆が数粒ころころと皿から落ちて転がっていた。茶化すように傍観に回ったリーに恨めしい目を向けながら「大丈夫だって!」と言うと、フレッドの隣りに座っていたジョージがくるりと私の隣りに来て双子に挟まれた。

「まぁまぁお嬢様、そう言わずに!」
「この双子の召使いめがお世話させて頂きます!」

「何が食べたいですか?お嬢様!」
「ほぅら、お口をお開け下さいませお嬢様!」

何たる羞恥プレイだ!にやにやと笑いながら本物の世話係のようにあれやこれやと料理を取ってくるジョージに、フォーク片手に細かく切ったチキンのトマトソース煮込みを私の口に運ぼうとするフレッド。

リーとアリシアは、そんな私達を見て止めようとはせず、けらけらと笑っているし…。我関せずのアンジェリーナは、もりもりとベイクドビーンズを自分の皿に乗っけて食べていた。

やはり、アンジェリーナ様は今日も男前でかっこよかったです。

20130815
title by MH+
[top]