万物流転 | ナノ
11.そうなん8
緩やかに速度を落とし、特急は雨が降りしきる暗闇の中に停車した。ガッタンと何処かのコンパートメントからトランクなどの重たいものが落下する音が聞こえくる。ロンが「え、なんで停まっちゃったの!?」と慌てて立ち上がり窓ガラスにへばりついた。

ハリーが扉を開け薄暗い通路を覗くと、彼と同じように困惑した表情の他の生徒たちで溢れていた。そして、ガタンガタンと音を立てて車体が大きく二回揺れると、何の前触れもなく車内の灯りが消えて女子生徒の悲鳴が響き渡った。怯えたロンが移動して「イタッ!」ハーマイオニーの足を踏んだ。

私はの中の三人に「様子を見てくる」と言い、ハリーの鼻先でぴしゃりと扉を閉めた。目を凝らすと、数人の人影が通路に立っており「生徒は落ち着いて自分のコンパートメントに戻りなさい!」と声の限り叫んで、扉から突き出ている頭を中に押し入れた。ガクガクと通路で怯えている生徒を近くのコンパートに入れてポケットに入っているチョコを渡す。

一通りの生徒を捌き終えてハリー達の方へ戻ろうとした時、反対側から聞き覚えのある声に呼ばれ振り向くと、この暗闇にもわずかな灯りを反射してキラリと光る穴熊とPの文字が見えた。彼は、私と同じく新しくハッフルパフの監督生に成った…

「ディゴリー!」
「やぁ、レイリ。怪我はない?」
「…えぇ、私は。あなたも?」
「あぁ。僕も大丈夫だよ」

にこりと安心させるように笑って背中を撫でた。「そっちに怪我人は?」とその手から逃れるようにパッと彼から離れて私は聞いた。「荷物棚からトランクが落ちてきて頭を怪我した子がいたけど、それ以外は大丈夫だったよ」と残念そうな顔をしたセドリックは呟いた。

「僕は先輩にこちらの状況を伝えてくるよ」
「えぇ、分かったわ。私は持ち場に戻るね」

私は彼にチョコとキャンディーの包みをひとつずつ手渡して「お願いね」と念を押した。甘いものに目が無いセドリックは、きらっとその灰色の目を輝かせながら勇敢にもこの暗闇の中を進んで行った。特急の外は、激しい雨が降りしきっていた。

20130815
title by MH+
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