万物流転 | ナノ
5.そうなん2
随分と軽くなった肩掛け鞄を感じながら、人でごった返す横丁を歩きに歩き回ってやっと『漏れ鍋』へと到着したのは、夕方になってからだった。

疲れた顔をして入ってきた私に気付いた店員さんが駆け寄ってきて荷物を持ってくれた。「あの、予約していたウチハですが…」と言えば、頭の上の豆電球が光る残像が一瞬だけ見え、その人は九号室に案内してくれた。

部屋は、私の借りている宿泊施設の部屋よりも簡素な作りになっていた。けれど、ベッドは最高にふかふかだった。そのベッドに吸い込まれそうになりながらも、身体は正直で、グーと鳴らした本人までもが情けなくなるか細い音がお腹から聞こえる。

掛け時計をちらりと見ると、夕食をとるにはもう良い時間になっていて私はのそのそと寝心地のよいベッドから這い出て食事をするための場所へと身体をひきずっていった。一階の飲食スペースまでいくと、何やら聞き慣れた声で賑わっている団体様を確認した。

階段からひょっこりと覗くと、そこで食事をしていたのは毎度お馴染み赤毛のウィーズリー家と、プラスアルファのハリーとハーマイオニーが食卓を囲っているではないか!

『なにこの知り合い勢揃い…』と思わず母国語で呟いてしまい、その声を聞き取ったジニーが振り返って「あ!レイリさん!」と叫ぶと、そこにいる十八個もの目玉が一斉に私を見つめてきたものだから、私は硬い微笑みを顔に貼付けて「こんばんは?皆さんお揃いで…」と言う他なかった。

双子が席を立ち私に駆け寄ってくる前に、嬉しさ溢れる笑顔でジニーが私の腕を引っ張って、パーシー先輩と自分の間に座らせた。私の椅子は、どうやら先輩が運んでくれたらしい。何と言う息のあった兄妹のコンビネーションだろうか。

フレッドもジョージも半分立って半分座ったような体勢のまま、二人の間に腰を落ち着けてしまった私を見つめ、あんぐりと口を開けて固まっている。そんな彼らの姿を見て、その場にいる彼ら双子以外の全員が笑った。

ぐるりと視線だけで皆の顔を見渡した時に、ハリーと目が合ったような気がしたけど、すぐに逸らされてしまった。どうしたのだろう?いつもの彼は、そんな風にする子ではないのに…。まさか、誕生日プレゼントが気に入らなかったのか?もしかして、上手く発動しなかったのか?

そんなことを考えたが、あの手紙を送った次の日には彼の梟が返事を持ってきてくれて、そこには急いで書きました!と彼の嬉しさが乗り移ったような文字で感謝の言葉の数々が書き連ねてあったので、そんなことはないだろう。んー。ハリーも異性と目を合わせるのが難しい時期に入ってきているのだろうか。

私はそんな風にを思いながら、目の前の色味も普通で、口の中に唾液がじゅわっと出てくる美味しそうな料理に手を伸ばした。珍しく上機嫌なパーシー先輩の隣りで、チキンにかぶりつく。あぁ、やっぱり美味しい…。

20130815
title by MH+
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