万物流転 | ナノ
29.わらって3
あの憎きドラコ・マルフォイの父親が学校の理事を辞めさせられたと聞いたのは、全てが終わってからのことだ。

あの日、リドルの日記に僕の靴下を挟んでマルフォイ氏にその日記をお返しした。彼は屋敷しもべのドビーにその日記を投げて寄越して、くるりと振り返った。

僕はそんなドビーに、本を開くような仕草を見せる。困惑気味の表情のドビーは、ようやく理解したようでその日記をゆっくり開いた。そして「ご主人様が…ドビーめに靴下を下さった」と震える声で言った。その時の凍り付いたマルフォイ氏の表情は、今思い出しても笑えるね!

やぁ。僕はハリー・ポッター。
今年も忙しい一年だったけど、なんとか生き延びれたよ。
そんな僕の闘いの記録を今から話すね。


***


スネイプからポリジュース薬に必要な残りの材料をハーマイオニーが上手く盗み出してくれた。その一週間後の決闘クラブでは、僕は自分が『パーセルマウス』だと知った。それから、同級生のハッフルパフ生であるジャスティンと首無しニックが襲われて、僕の立場は悪くなっていくばかり。

僕は神に誓ってスリザリンの継承者じゃなんかない!と自分では言い切れるのに…ハーマイオニー曰く、サラザール・スリザリンが千年も以上の前の人であるから、その可能性が無いとも言い切れないんだって。

そこは嘘でも「ハリーは継承者なんかじゃない!」って言って欲しかったな。博識な彼女からそう言われて、自分に自信をなくしたのも丁度その頃。グリフィンドールの人からも疑いの目で見られてとても辛い毎日を送っていた。

ミセス・ノリスや首無しニックを含めて石にされてしまった被害者は三名と一匹。とうとう、マクゴナガル先生にダンブルドア校長先生の部屋へ連れて行かれ、そこでは校長先生のペットの不死鳥の『燃焼日』にあたってすごくハラハラした。

想像通り、今年のクリスマスに学校に残るのは極わずかな生徒だけだった。真っ白な雪が降り続いて、しんとするホグワーツでは厄介な視線に晒されることもなく、僕の心を穏やかに伸びやかにしてくれた。

クリスマスの日に、例の薬が完成した。後は自分が変身する相手の身体の一部分をゲットしてこのどろどろの液体に溶かし込んで飲めば完璧であった。ハーマイオニーの立てた計画は、少々不安であったが、予想外にもクラッブとゴイルはあっさり僕らの仕掛けた甘い罠に引っかかってくれて、大助かりだ。

スリザリンの談話室まで行くのにすごく時間を食ったけど、何とかマルフォイから話を聞くことが出来た。まぁロン曰く「まったく時間のムダにはならなかったよな」程度の情報ではあるが…。

しかし、問題なのはハーマイオニーがミリセントの毛だと思い込んで薬に溶かして飲み込んだものが、実は猫の毛で、数週間彼女が医務室に寝泊まりしなければならなかった点だ。その間、勉強熱心な彼女の為に新学期が始まってからは毎日夕方に宿題をもって見舞いにいった。

嘆きのマートルがトイレを水浸しにした。そこで僕は、五十年前にホグワーツの生徒だったT.M.リドルの日記を見つけた。二月の始めにハーマイオニーは元の姿で戻ってきて、僕達に明るい笑顔を見せてくれた。

その頃は、不気味な声も聞いていないし、生徒が襲われることもなかったが、ピーブズが僕の状況を悪くする一方だった。相変わらずロックハートは、自分が襲撃事件を止めさせたのだとかなんだとか考えていて、マクゴナガル先生を困らせていたけれど…。

20130813
title by MH+

*急ピッチでラストに向かいます
[top]