万物流転 | ナノ
5.はてまで4
僕らのホグワーツ三年生の最後の日、最高の気分で帰りのホグワーツ特急へと乗り込むと僕の片割れのフレッドが、同寮の女子生徒レイリを、僕とリーのいるコンパートメントへと連れてきた。

学校内では、いつもからかったり悪戯したり、課題のレポートや授業のノートを見せてもらったりなどして関わる機会は多いにあるけど、一緒のコンパートメントの個室に入るのはその時が初めてで自分でもらしくないくらいに変に緊張してしまったのを覚えている。

二年生のクリスマスにレイリには一度家に来てもらったことがある。ママは「女の子にそんな仕事をやらせてはなりませんよ!」と言ったけど、庭小人の駆除をやりたがったレイリにママはしぶしぶ頷いて、三人で沢山の庭小人を放り投げた。そして、たまたま帰省していたビルと、チャーリー、ロンの六人で魔法有りの雪合戦をしたのはいい思い出だ。

そして僕らが四年生になる年の長期休暇。フレッドが「暇だ。レイリに会いたい。レイリを家に呼ぼう」と言い出して、なんやかんやで僕もその気になって、その日から一週間くらい二人で彼女に手紙を送り続けた。

でも、帰ってくる手紙の内容は「忙しいから無理」「また来年にしよう」「風邪をひいたからパス」「弟や妹に移すと面倒だから遠慮する」などといったつれない返事ばかり。どうしても諦め切れない僕らは、同じように、僕らにとって寮の後輩であるハリーへと「うちに泊まりにこない?」と手紙を送り続けているのに、一通も返事がこないロニー坊やと結託することにした。

そして、そんな彼らと三人で話し合って、これはもう僕らが迎えに行くしかないよね!という…なんとも自己中心的な答えに辿り着く。でも一応、出発前日に『夜に部屋へ攫いに行くから、準備して待っててね』なんて、物騒なことを書き連ねた手紙を送ったのであった。

深夜、彼女からの手紙で指定された部屋609号室の扉をノックすれば開いた扉の向こうに、白っぽくてふわふわしたネグリジェに身を包んだレイリがいた。学校が休みの日は私服を着てるけど、何て言うのかな?こう…女の子っぽいレースとかリボンとかが付いたワンピースのような服を着てるのは初めて見たから、ドキッとした。

三年間も一緒にいるのに…同じく片割れのフレッドも彼女のこういう姿は初めて見る訳で「こんな時間にレディーの部屋へ訪れるなんて…あなた達どうかしてる」と癖で髪の毛を左手でクシャッとしながら呆れて溜息を吐いた彼女を見たフレッドは、レイリの目から見れば平常運転に思えたかもしれなけど、僕から言わせてもらえば、動作はぎこちなかったし、見惚れてたのがまるわかりだった。

僕が『可愛い』って言ったのを、鈍いレイリはきっとお世辞だって思ってるけど、彼女は男子寮で噂になるくらい小さくて可愛らしい。あのグリフィンドール嫌いなスリザリンの奴らですら、僕らのレイリのことをそのように言うくらいだから、その容姿の可愛らしさは保証されよう。

声を張り上げて「おだてたって、ムダ!」と言った後に咳き込む彼女に「本当に風邪ひいてたんだね」と僕は着ていたジャケットを羽織らせた。兄のお下がりで僕にはちょっと窮屈なそれも彼女が着るには大き過ぎて、裾が彼女のお尻をすっぽりと覆ってしまっていた。

フレッドが部屋の中央にあるベッドの上の荷物を確認している時に、マスクをした上から口を押さえていた彼女が「だからお誘いを断っていたのに…」と呟いた。すぐ隣りに立つ彼女から、ほんのり赤く色付いた頬と風邪の所為でいつも以上に潤んだ瞳に見詰められて、もう…生殺しのような感覚を味わった。

僕だって健全な男なんだからねレイリ!

20130811
20170103修正
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