万物流転 | ナノ
4.はてまで3
朝食をそこそこ食べ、フレッドによって注がれたミルクをぐいっと一息で呑みきった。ぐらぐらと揺れる視界と、ふわふわと軽い身体。大変だ…熱が、上がってきたみたいだ。

食べ終わった私は直ぐさまマスクをつけ、赤い顔の大半を覆ってしまった。出ているのは目元だけ。髪の毛を手櫛で整えながらなるべく顔を隠すようにした。

幸いなことに、私の異変にウィーズリー夫人は気付いていない。彼女が私の体温の上昇に気付こうものなら、私をあの部屋から連れ出したフレッドとジョージは、ただでは済まされないことになるだろう…。それを想像すると、ぷるりと背中から震えがきた。

隣りで食べているジョージの服の裾をちょいちょいと引っ張る。すると、パンをかじっていた彼はくるりと私の方を向き直った。私は声を落として「熱が上がってきたみたい。横になりたい」と伝えると、ジョージはパクパクパクッと残りのパンを口に押し込んだ。

「ママ!レイリが眠たいみたいだから、僕ベッドに案内してくるね」

その時、幼く高い声で「キャッ!」と小さな悲鳴が聞こえた。淡い色のネグリジェに身を包んだ小さな女の子の姿が走り去って行った。ハリーの隣りで食事をしていたロンが「ジニー」と小声で言ったので『ジニーちゃんかぁ』なんて私は頭の隅で思った。

「え、えぇ…きたないところだけど、ゆっくり休むといいわ」
「…ありがとう、ございます」

「ハリーも上に行って、お休みなさいな。あのしょうもない車を
 飛ばせてくれって、あなたが頼んだわけじゃないんですもの…」

凄みを利かせてフレッドとロンを睨んだ夫人は、私からは顔の表情が見えないはずなのに、背中からのオーラで圧倒されるようでした。そのオーラから逃げるように、私とジョージは二回へ繋がる階段を登った。

「レイリ、歩ける?大丈夫?」
「だ、いじょうぶ…まだ、歩ける」
「ちょっ、レイリ!」

壁伝いに歩く私を心配そうに前を行くジョージが振り返る…と言うのを何度か繰り返しながら歩んでいる。すると、次に出した足がもつれて、ジョージの方に突っ込んでしまった。その際、彼から借りていた上着に袖を通していなかったために、バサリと肩からそれが落ちる。

信じられない失態ばかりだなぁと自分で自分を嘲笑してみるも、ジョージの支えなしでは立っていられないほど風邪に侵された自分の身体が悔しかった。

20130811
title by MH+
[top]