万物流転 | ナノ
3.はてまで2
丸くて優しそうなウィーズリー夫人が、まるで般若のような形相で庭の向こうから家の鶏を蹴散らしながら猛然とこちらへ近づいてくるのは圧巻であった。車から降りた私達が整列する前で足を止め、仁王立ちして子ども達を睨み付ける。

「ベッドは空っぽ!メモの置いてない!車は消えてる…事故でも起こしたかもしれない。母さんは心配で心配で気が狂いそうだった!」

それから夫人はあれこれと他の兄弟のことを例に出してフレッドやジョージを叱りつける。隣りに立っていたフレッドが「完璧・パーフェクト・パーシー」と呟くのが聞こえ、この場に対して不謹慎ではあるが吹き出しそうになったため、私はフレッドの足を踏みつけておいた。

「まぁ、ハリー!それに、レイリちゃん!
 よく来てくれたわねぇ。さぁさ、家へ入って、朝食をどうぞ…」

戸惑うハリーの肩に手を添えて、私達はウィーズリー夫人の後に続いて隠れ穴へと入った。家の中は、お世辞にも広いとは言えないが、使い込まれた台所に洗い込まれた木のテーブルと椅子が、なんとも温かい印象を受ける。以前、ここへはお邪魔したことはあるが、その時と全く変わらずそこにあった。

がちゃがちゃと音を立てながら、夫人は朝食を作って行く。何か手伝うことはないかと伺えば「レイリちゃんのようなお客様に手伝ってもらうなんて!」と近くにいたフレッドに睨みを利かせ給仕をさせた。

「アーサーと二人であなたのことを心配していたのよ、ハリー。
 昨夜も、金曜日までにあなたからロンへ返事がなかったら、わたしたちが迎えに行こうって話していたぐらいなんだから!」

大量の目玉焼きと何本ものソーセージが出来上がり、フレッドによってミルクがそれぞれのマグに注がれた。ジョージがフォークを手渡し、ロンがずっと立っていた私とハリーを席へ案内してくれた。

夫人は食べ出した子供達を見て息をはき、ハリーと私のためにパンを切ってくれた。ハリーの分にバターをたっぷりと塗ったところで、私のものにもバターを塗ろうとしたので断り、そのままのパンを彼女の手から受け取った。表情から察するにどうやら怒りがおさまったようでちょっとだけ安心した。

20130811
title by MH+
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