万物流転 | ナノ
10.きらめき
クリスマス休暇になった。私は今年も学校へ残り、アンジェリーナやアリシアをホームで見送った。プレゼントはもう発送したし、あとは休暇中に出された課題をスケジュール通りにこなしていけば何も心配ない。

休暇の一日目、私が学校に残っているのを知ったハリーとロンはとても驚いているようだった。どうして家へ帰らないのかと尋ねられ、苦肉の策ではあるが、彼らには私の家が遠い東の島国であることを伝えた。なるほどなるほど、と頷いた彼らに心の中だけで嘘を言ったことを謝った。

談話室の端、暖炉の前でハリーとロンがチェスをしているのを何度が見かけたが、私はこれまでロンが他の人に負けるのを見たことがない。それに、ハリーの使っている駒がプレイヤーである彼に文句を垂れているのを聞き、ハリーには失礼だがこっそり笑った。

イブの夜は、ほんのちょっとだけ寂しくなった。ベッドに入ると、いつもはしゃべり声で騒がしげなこの部屋も、私以外の子はみんな家に帰省しているためとても閑散としていて冷たかった。

私がこの世界へ来るまでは、クリスマスと言う風習がなかったため、12月25日にプレゼントを送り合うという経験は何十年振りで、いささか心を躍らせるものであった。彼らは喜んでくれるだろうか?…そんな風に、彼らの笑顔を思い浮かべながら、自分を慰めて眠った。

***

クリスマスの朝。ベッドの側には沢山のプレゼントが置いてあった。去年よりも確実に増えたであろうその量に、頬が引き攣るのを覚えた。今年送った人とそうでない人にプレゼントを分けながら、来年はハリーの分も準備しようと誓った。

プレゼントを開けていたため、いつもより遅くに談話室へと行くと、栗色のセーターを手に持つ赤毛の少年とエメラルドグリーンのセーターに身を包んだ黒髪の少年を見つけた。私の姿を見るなり手で目を覆ってしまうロン。どうしたと言うのか。

「ポッター、メリークリスマス」
「メリークリスマス!…あ!レイリ先輩にも贈られていたんですね!」
「…あぁ、これ?」

「まさか『ウィーズリー家特製セーター』がレイリ先輩にまで贈られてたなんて!」

「そんな顔しないで、ロンくん。
 私は、温かくてもこもこしてて、気に入ってるんだから…」

ポンと肩に手を置きながら、彼の肩を擦る。手を離してから自分の着ている手編みのセーターの触り心地を確かめる。うん、やっぱりいい素材の毛糸を使って愛情たっぷりに編み込まれているのが分かった。

20130810
title by MH+
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