万物流転 | ナノ
9.おおぞら3
「…イクサハデキヌ?」
「そう。腹が減っては戦はできぬ。
 この言葉は空腹では最高のパフォーマンスはできないって意味なの」

向かいの席にいたハーマイオニーはパッと何処やらから取り出した手のひらサイズのメモ帳にこれをメモっていた。うわぁ…勉強熱心だなぁ、この子。そして肝心のハリーは、すぐ後ろに立っている私の方へ身体を捩って顔を向けた。目の下にはうっすら隈がある。

「ポッターは私達の寮のシーカーという大事な役割がある。あの子がいうように、シーカーは敵に狙われやすい。 けれど、あの双子があなたをブラッジャーから守ってくれるわ」

「そうだよハリー!フレッドとジョージが君にブラッジャーを当てさせる訳がないよ!」

「…ほら、弟のロンくんだってそう言っている訳だから。あなたは、あなたの役割をただひたすら果たすだけでいいのよ」

ぽんっと、彼の自由奔放に跳ねる黒髪に手を置いてくしゃくしゃと落ち着かせるように撫でてあげた。「ね?」と同意を求めるように頭を傾けて笑えば、照れたように頬を染めて「はい」と返事をした。

「だからポッターの周りの友達があなたに言うように、少しでも食べられる物があるなら食べておきなさい」

「おーい、レイリー!」
「早く行こうぜー!」

「…双子が呼んでるから、行くね。それじゃあグレンジャー、あとのことは任せたよ?」
「はい、レイリ先輩!」

「ポッターは怪我しないようにね」
「あ、ありがとうございます。先輩」

軽く手を振りながらその場を後にする。大広間を出ると、待ち構えていた双子がにやにやとした笑みを顔に浮かべて寄ってきた。

「俺達の勝利は見えたも同然だぜ、相棒!」
「そうだな、兄弟!」
「…はぁ?」

「なんてったって、ご本人様々が」
「我らの幼きエースにエールを送った!」

「「勝利の女神は我らグリフィンドールに微笑むのだ!」」

両方から叫ばれて、うるさいやら恥ずかしいやら…私は彼らの背中にありったけの力でもみじをお見舞いしてやった。「痛い!何するんだよ!」と涙目の二人から言われるも無視をして歩みを進めた。

そして双子の言った通り、寮対抗グリフィンドルVSスリザリンの試合では、ポッターのミラクルお口キャッチによって我が寮の勝ちとなった。一年生に交じって応援していた私は、思わず隣りにいたロングボトムくんに抱き着いちゃったけど…いいよね?嬉しいし。

次のホグズミート村行きでは双子とアンジェリーナにご褒美をねだられたが、それはまた別のお話。

20130810
20160401修正
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