万物流転 | ナノ
19.よきせぬ6
「え!レイリどうしてここに居るの!って…まぁ!ずいぶんダイタンなスリットの入ったドレスねぇ!」

進行形で自分の過ちを悔いていたところに、きゃらきゃらと高い笑い声が響いてきた。そんな絶望の淵に立っていた私の前に現れたのは、今一番会いたくない人No.1に輝く笑い声の主であるアリシア・スピネット様と、同じ学年の監督生であり、アリシアのパートナーのコンラッド・アダムスくんだった。

「あ…ああ、アリシアさん!」

「わーお!キミ、すごくセクシーだよ!」
「こ、コンラッド!誤解しないで!これには海よりも深く、山よりも高い事情が…」

しどろもどろになりながら、二人に説明しようと口を開くも、ずいずい私のパーソナルエリアにまで近寄ってきたアリシアが私の髪の毛を手に取ったので、私の言い訳はそこで止まった。

「うわぁ…もしかして、この髪の毛自分でやったの?」
「は、はい…アリシアさん、すみません。土下座でもなんでもするので、許して下さい」

ジト目で見られるのには慣れない。「ドレスはまぁ、レイリの綺麗な白い足を際立たせててインパクトがあっていいけど、」そう言って顎に手を置いて考え出したアリシアに、付け加えるようにして口を開いたコンラッド・アダムスくんの言葉は「ま、まぁ、男子生徒はきっと目のやり場に、こ、困ると思うけどね…あはは」ご尤もでございます。

「それにしても、髪型が全然なってないじゃなーい!ダメよだめだめ!やり直し!って言うか、私が巻いてあげるわ!くるくるにしてあげる!」

目を光らせて、私の肩を掴んできた彼女。いたたたた!爪が私の肩に食い込んでますってば!私は、何とかして彼女を止めたくて「や、やめてよ!レイリさんは、大イカとお友だちになってくるんだから!」と支離滅裂な言葉を口から産出してしまった。

「ぶっ!…レイリ、君それ本気かい?」
「せ、セドリック!…あれ?レイブンクローの子は?」

アリシアは突然の彼の登場に驚いたように、私の肩からパッと手を離した。クィディッチの敵寮チームキャプテンでありシーカーのセドリックであるが、アリシアは彼のことを、少なくとも嫌ってはおらず、彼に対して少しミーハーな一面を見せていた。

「たくさん踊って疲れたから、逃げてきちゃったよ」

おうふ!久々のはにかみが目に眩しいであります!頬をピンクに染めたアリシアは「私たち、お邪魔よね?」とコンラッドの腕を掴み(レイリ、王子様と上手くやるのよ!)と私に耳打ちをして行ってしまった。コンラッドはコンラッドで「それじゃあ、また後でね!そのドレス…す、すごくキミに似合ってる、よ!」と言い残して去って行った。

「レイリのドレス姿はもう見られないかと思ってたのに…」
「見ないで、セドリック…恥ずかしいから」

「いやだよ。勿体ないし…それに、その…とっても似合ってると思うよ…あー、でも。ちょっと目のやり場に困るかな…その、なんと言うか、まぁ…」

「ごめんなさい。こんな貧相な足を晒してしまい申し訳ないです。湖に沈んでくるので、私を行かせて下さい」

「あっ…!待ってよ、レイリ!」

羞恥心に絶え切れず、私はバッと顔を覆うと壁際まで走った。ヒー!本当に私の存在は、精神衛生に悪いですね。ごめんなさい、ごめんなさい!たいして綺麗でも、長くもない足を晒してしまってすみません!沈みます。埋まります!むしろ、穴に入って蓋をしてもう出て来れないように、どなたか私を埋めて下さい!

セドリックの制止の声も聞かず、玄関ホールに飛び出した。正面の扉は開けっ放しになっており、そこからは夜の冷たい空気が流れてきており、私の肺をそのひんやりとした空気で満たしてくれた。羞恥心が最骨頂に達し、それが一回りして、またいつもの自分に戻れた気がする。

私はダンスフロアにひとり取り残してしまったコリンに悪いとは思いながらも、こっそりと寮へと戻る任務を実行に移すために、階段の方へと歩き出した。今度、もしドレスに変化しなければならないことが、万が一あったとしたら、ドレスの色だけじゃなく、デザインにも十分気を遣おうと思います。はい。

20130928
title by MH+

*Heroineちゃん、コリンを見捨てました
[top]