万物流転 | ナノ
18.よきせぬ5
教授達も踊り始めて、私は天文学教授のオーロラ・シニストラ先生と踊る義足義眼の教師を見つけて、じわじわと暗い感情が心の中でわだかまるのを感じた。初回の闇の魔術に対する防衛術の授業から、彼と私はギクシャクし始め、その関係は今も継続中であったのだった。

私が意地を張っている訳ではない。そして、彼もまた意地を張っている訳でなかった。ただ一つ、以前とのアラスターの違いを述べれば、彼はまるで、別人のように私に接するという点が挙げられる。

学校では、私が彼の養い親であることを公表すべきではないと彼は考えているようで、たとえ休日に廊下ですれ違っても(いや、滅多にすれ違うことなどないのだが)彼は私を見ようともしないし、他の生徒と同様に私を扱うのだ。

まぁ、あれだ。他の生徒と同様に扱うというのには少し語弊があるかもしれない。彼は、初回の授業で私達に許されざる呪文についてを教えたのだが、私が彼の服従の呪文を撥ね除けた時から、私に対して特に攻撃的になったのであった。

「先輩見て下さい!あそこだけ人集りがありませんよ…誰が踊ってるんだろう?」

私が悶々とアラスターとのことを考えているうちに『妖女シスターズ』の奏でるスローな曲が終わり、先ほどとは打って変わってテンポのずっと早い新しい曲を演奏し始めた。コリンの指差す方向を見ると、そこに居たのはフレッドとアンジーのペアだった。

二人は、まるで元気を爆発させたように踊っていて、周りの生徒からはちょっと避けられているみたいだった。確かに、近くであんなにアグレッシブに踊られて、自分たちが怪我をさせられてはかなわないので、皆が遠巻きにするのも仕方ないだろう。私はそんな弾けたフレッドとアンジーの姿に、クスッと笑った。

コリンがフレッドとアンジーの写真を取りに人垣の方へ挑んで行ったので、私はそれを見送り、ひとりでゼリーを突いていた。蜜柑ゼリーうまうま。ゼリーかぁ…よし。今度チャレンジしてみるか!上手く出来たらセドリックに持って行ってあげよう。

「楽しかったわ。じゃあねー!」
「あぁ、またな」

そんなことを思っていると、ダンスフロアからこっちへ来る薄桃色のドレスを着た女の子とドレッドヘアの青年を見つけた。二人が分かれるのを見掛けて、フリーになったリー(別にギャグじゃないからね!)に声をかけた。

「…あら。可愛い子じゃないリー」
「おい、お前!…レイリ、どうしてここに居ん、だよ…!」

そうしたら、ダームストラングの生徒がそうだったように、彼も私から目を逸らした。はぁ…だからね、そういう対応されると傷付くんですけど…

「ねぇ、どうして目を逸らすのよ」
「…お前なぁ、…はぁ。…鏡見なかったのかよ?」
「見たに決まってるでしょ?」

「…わかんねぇかな、レイリよ」
「…そんなに酷い顔してる?」
「…いや、いつもの童顔がいくらか大人っぽくなってるぜ!」

とうとう、額に手を置いたリーが「…って、いやいやいや。そう言うのは、どうでもよくてだな!」と言い、一段と深い溜息を吐いて声を落とした。その反応に「人の顔を見て溜息を吐くのは、失礼じゃなくて?」と唇を尖らせると、ちょっぴり顔を赤くさせたリーは「…その顔は反則だよな、あー、頑張れオレ」と言って熱い息を吐いた。

「お前、今、自分が何着てるか知ってっか?」
「…ドレスじゃない。どこからどう見ても、完璧なスカーレット色のドレスでしょ?」

「あぁ。グリフィンドールカラーが人目を引くドレスだな。…でだ、そのドレスが問題なのな」
「…はぁ?」

そして再び薄らと頬を染めたリーが「…男のオレが言うのもあれだが、ほら…自分の足見てみろよ」と言い、私の足を指差した。彼はそのまま目元をたくましい手で覆ってしまい「あー、喉渇いたわ。オレ、バタービール飲んでくるわ」と言って私の前から立ち去った。

なるほどねぇ。うん。これは…そうだな。…思春期の男の子達には、申し訳ないと思うよ。こんな貧素な足を晒してしまって。うん。何ていい訳したらいいかな。…えーと、まぁ、とりあえず、向こう一年間くらい湖に沈んできた方がいいよね。皆の精神衛生の為にはそれが一番だよね!

つまりは、ドレスの選択をミスったと言うことです。もういい!私、大イカとお友だちになって来るんだから!!うわーん!

20130928
20160312修正
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