万物流転 | ナノ
17.よきせぬ4
ヒールなんて履くもんじゃないなぁと早くも思っています。カツカツ靴音を響かせながら二人でホールまでへ行けば、そこでは代表選手の四人とそのパートナーが拍手で迎え入れられているところであった。あ…やっぱり、セドリックはチョウ・チャンとなんだね。

興奮するコリンの後に着いて行き、私達も大広間に入った。そこは、まるで雪の城のようだった。壁はキラキラと銀色に輝く霜で覆われ、いつもの魔法の天井では星が瞬き、何百というヤドリギや蔦の花綱が絡んでいた。「わぁあ!」と感嘆の声をあげたコリンは、すかさずこの美しい大広間を写真に収めている。

「あ!先輩見て下さい!」
「ん…え?」
「代表選手たちのダンスが始まりました!」

頬をピンクに染めてシャッターを切るコリン。ふわふわと宙を漂うトレーの上に置かれていた葡萄色の液体の入ったグラスを取って飲んでいると、コリンがそう私に伝えた。彼の指差す方を見ると、ダンスフロアでは、確かに彼らは踊り始めていた。

「もっと近くで見ましょうよ!先輩」
「え、あ…私はここにいるわ」
「遠慮しないで下さい。ほら、行きましょうよ」
「え、あ、ちょ…クリービー!」

年下には滅法弱い私は、彼に掴まれた手首を振り払うことなんて到底出来ず、多くの人が立ち並ぶことによってできた垣根をぐいぐいと押し進んで行った。

後輩の誘いは強引なのに、どこか彼の行動を許せてしまうのは、私も彼らが踊っているのを見たいと、心の中ではこっそり思っていたからだろうか。…きっとそうに違いない。

ハリーのパートナーは、同寮の後輩であるパーバティ・パチルであった。彼女は学年一の美女と噂されるほどの可愛らしい女子生徒であり、彼女の双子の妹で鷲寮に所属するパドマ・パチルも同じく素敵な女の子であった。

パドマは、どうやらロンくんのパートナーになったらしい。そして、ロンくんのちょっとワイルドなドレスローブに顔をしかめている。私には、彼女がロンくんに対して見えない壁を作って立っているように見えた。

セドリックのパートナーはチョウ・チャンであるが、彼女もパドマと同じ鷲寮の生徒であり、レイブンクローのクディッチ代表チームのシーカーを務めている。

ダンス中、ずっとセドリックの方を見つめてはうっとりとしているが、そんな彼女に対してセドリックは、ほんのり苦笑を浮かべながらステップを踏んでいた。

彼女と同じくレイブンクロー代表チームのキャプテンであるロジャー・デイビースは、フラーのパートナーを務めていた。

試合の時はキリッとしていて、女子からはそこそこかっこいい(と噂されるほどの)ルックスの持ち主ではあるが、現在の彼はヴィーラの血を引くフラーに完全に魅了しており、今にも魂が抜け出てしまいそうな、緩み切った顔を晒していた。

この顔を目にしてしまっても、彼のファンでいる女子生徒は、果たして何人いるのだろうか?私はただただ疑問を感じている。

そして、アリシアの手によって、さらさらの直毛を手に入れたハーマイオニーはクラムのパートナーを務めており、照れたような笑みを浮かべながら、クラムとのダンスを楽しんでいるようで、私も嬉しくなった。

しばらく眺めていると、他の生徒も踊り始めたので、ハリー達代表選手は人ごみに紛れてしまう。身長の低いコリンは、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、何とかしてハリーの姿を見つけようとしていたが、あまりの生徒の多さに諦めたようだ。

「どう?いい写真は撮れたかしら?」

私が声をかけると、まるでチワワのような潤んだ瞳が私を見上げてきた。「はい!ハリーもセドリックも、クラムもデラクールもバッチリです!」と言ったコリンの瞳は、輝きが増していた。オレンジジュースのグラスを渡すと、彼はそれを勢いよく飲み干した。

20130928
title by MH+

*コリンのイメージはチワワです
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