万物流転 | ナノ
16.よきせぬ3
私が心の中で頭を抱えて、助けを求めている時に、一際大きい声で「お願いします!僕と一緒にパーティーに行って下さい!」とコリンは頭を下げた。イヤー!私に頭なんか下げないでぇー!

そして、私が彼の願いに心がぐわんぐわんしていると、下級生の名前も知らない女の子が「レイリ先輩、あの…コリンを連れて行ってあげて下さい!」と言い、彼女の周りにいた子も「私達、規則は守って大人しくしていますから!」と言った。

男の子達も「そうですよ、先輩!おれらこれで満足ですから!」「ついでにフレッド先輩とジョージ先輩達に、お礼言ってきて下さい!」次から次へと、私にパーティーへ行ってきてとせがむ後輩達。ぐぬぬ…

「…顔を上げて、クリービー?」
「上げません!先輩がパーティーへ行くって言ってくれるまで、僕は、顔を上げません!」

「…一緒に行ってあげるから、顔を上げてくれる?」

その場の空気・雰囲気って恐ろしいですね。それと、三年生の結束力の高さって怖いですね。よく見たら、彼らはジニーや目の前のコリンと同じ三年生の生徒じゃまいか!ははは…私はついに、彼の願いを承諾してしまったのでした。ヒー!リーやアリシアから何て言われるのやら…。

私は、遠い目をして女子寮の階段を駆け上がり、部屋に入った。ベッドにはアリシアの残して行った雑誌が無造作に置いてあり、それを借りてたまたま開いていたページのグリフィンドールらしい緋色のドレスが目に付き、変化の術を利用して、ドレスに着替えた。

今思ったんだけど、変化の術で別の衣服を身に付けた自分に化けるって言うのは、着替えるという行為に当てはまるのかな?

…まぁ、そんなことはどうでもいいので、適当に伸ばしている髪の毛をパーティー用にどうにかするために、紙面の上でポーズを決めているモデルの髪型を参考にして、髪の毛へ魔法をかけた。

ヘアスタイル番長のアリシアが見たら絶対怒られること間違いなしだが、十秒クオリティーにしては、ハイレベルではないだろうか?

アンジー達のようにパフでファンデーションを顔全体のせるなんてことは面倒くさいので、化粧も変化の術でちょちょいのちょいだ!鏡の中の自分は、自分じゃないように見える。

クレオパトラも真っ青なアイシャドウにくっきりとしたアイライン。口紅はドレスとお揃いの鮮やかな赤。誰だこれ状態ではあるが、コリンを待たせてはいけないので、私はすぐに部屋を出た。

自分のドレスをじっくり確認することもなしに、談話室へ行くと女子生徒からは「短時間でこんなメイクができるなんて!」「レイリ先輩、大人っぽいです!いつもは、可愛いのにギャップ萌えが…」と聞こえてくる。

いや、こんな私に萌え要素はないはずだ。あなたには、眼科を受診することをおすすめしますよ。そして、男子生徒は、私の姿を見るやいなや、みんな顔を赤くさせて、目を逸らしてしまう。何故だ!そんなに見るに絶えないのか!女の子達は褒めてくれたぞ…あ、お世辞か。

「…レイリ先輩、とっても綺麗です!写真撮ってもいいですか?」

嬉々としてカメラを構えるコリンに、私はどうにでもなれと、半ば投げやりになりながら、ドレスの裾を掴み駆け足で談話室を後にしたのだった。





という深い訳がありまして、現在私は、カメラを首からぶら下げた後輩コリンにエスコートされながら、大広間へと続く長い階段を下っておりますのよ。おほほほ。

…うん、私がこんなに着飾ってるのを、物珍しそうに見てくれるなよ。さっきから、周りからの視線が身体中に突き刺さって、胃に穴があきそうであります。

それから…ダームストラングの生徒諸君!顔を背けるならば、私を見るな!地味に傷付いちゃうでしょうが!

20130926
title by MH+

*やっと、Heroineがパーティー会場へ向かいます
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