万物流転 | ナノ
13.うまれる2
クリスマス当日の朝、同室の女の子達は、山のようにドッサリ送られてきたプレゼントには目もくれず、お互いに今夜着るドレスの見せ合いっこが始まって、化粧品や香水、アクセサリーなどの披露会が始まった。

皆、まだ若くて肌もきれいだし、着飾ったりしなくたって、そのままでも十分綺麗で大人っぽいのにね。どうして、わざわざ厖大な時間を掛けて念入りにメイクを施したり、ドレスアップしなきゃいけないんだろう?私は、女の子達の気合いの入りように若干引いた。

私が最後のプレゼント(シリウスとルーピン先生の連名のクリスマスカード付き)の中身を確認し終えると、ようやっとファッションショーも終了したようで、アリシアが「レイリお待たせ!朝食に行こ!」とベッドに腰掛けていた私の腕を引っ張った。

朝食を済ませた私達は、談話室に戻った。ホグワーツに残る生徒達は皆、どこか落ち着かない様子でそわそわしている。よっぽど今晩のクリスマスパーティーが楽しみなのだろう。私も、確かに楽しみではあるが、ダンスを踊れない私が、それに参加するのはなんだかとても気が引けるのだ。

私は同じ寮だろうが、他の寮だろうが関係なく、同級生や先輩、下級生からパートナーの申し入れをされたが、全て断った。その理由は、自分がダンスを踊れないので相手に恥をかかせてはならぬと思ったからだった。

だから、談話室の端っこで、どんよりとした重たい空気を背負っているジョージのことは、見て見ぬ振りをしたのだった。

昨日、夕食が終わってから、いつものように図書館へ行く途中にセドリックに出会い空き教室へと連れられた。そこでは、二度目となるクリスマスパーティーへ一緒に行かないか?という誘いを受けた。しかし私は、先ほども述べたように、メインの主張はあれで、あれやこれやと理由を並べて彼の誘いを断った。

しかし、彼は最後にひとつ、大きな爆弾をさみしそうな笑顔をして落としていったのだった。『君は、ウィーズリーが誘ってくれるのを待ってるのかい?』彼の言葉は、私の態度や現状を、非常に明快に言い当てていたのだ。

端から見れば、そう思われても仕方がないだろう。いつも一緒にいて、仲の良い私とジョージが、ダンスパーティーに共に行くことについて、誰が疑問を持つだろうか。いや、きっと…不特定多数の生徒達は、私とジョージが一緒にダンスを踊っている姿を見ても、特には何も思わないだろう。

それでも、ずるい私は、空き教室の外にジョージがいることを知っていてもなお、自分の気持ちに嘘をついたのだ。『私がジョージことを?…面白い冗談ね。いつも顔を合わせてる彼と私が、一緒にダンスをするなんて有り得ないわ、絶対』

この言葉は――弱い自分を守るための、せめてもの盾だった。

結局のところ、私は、自分の中で育ちつつあるとある感情を、肥えさせるのが恐ろしいんだ。人はいつか、離れてしまうから、まだお互いがお互いの距離を保っている今のこの時を、その境界線を、侵すことが怖いんだ。

やっと手にしたものを、手放す時がいずれ来ることを知っているから、人はきっと、他の何かに執着するんだ。それが愛であれ、憎悪であれ、他のどんな強い感情であれ…根本は総て同じなのだろう。

難しい言葉で綴ってみたって、私の気持ちは変わらない。
私は今も、素直になれないまま。

――ねぇ、シスイさん?

20130921
20160312修正
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