万物流転 | ナノ
14.よきせぬ
どうして私、ここにいるんだろう。あーあ。あんなにも頑固に余所人からのお誘いを断り続けてたのになぁ…。え?私が今、どこに居るかって?

それについては、少しだけ時間を遡って話したいと思うので、少しだけ私の愚痴話にお付き合い願えますか?





生徒達のおおよそがそわそわしていることを抜きにすれば(時刻的には少し早いが)いつもと変わらない夕食を終え、私はアンジー達と談話室へ戻った。温かい談話室には、もうほどんどの上級生の女の子達が戻ってきており、今晩のダンスパーティーのことできゃっきゃと騒いでいた。

中には、気の早い生徒もおり、すでにドレスに着替えているものもいた。さらに談話室の端の方では、髪型をセットしてもらっている生徒もおり、なんと言うか…とにかく、うらやましそうに見つめている後輩達のことも考えてやったらどうだろうか…と私は言いたい。

部屋に戻ってからは、アンジーやアリシアの着替えを手伝ったり、他の子の髪型やドレスを褒めることに徹した。彼女らが私の言葉に満足すると、こぞって鏡の前に移動し、念入りにメイクをはじめた。

そんな彼女らの邪魔にならないように、私は、先日スネイプ教授に提出し、今日返却された魔法薬学のレポートと、薬草学の参考書を持って部屋を出た。

談話室の暖炉に近いスペースを陣取り、スネイプ教授が赤で修正を加えて下さった文字を目で追いながら新しい脱狼薬についての案を練り直しているところに、寒さで頬を赤くしたハーマイオニーが帰ってきた。時刻は五時を過ぎており、彼女が私に気付くと「あれ?先輩は今夜の準備は…?」と聞いてきた。

「えぇ、私は…」

「この子、パーティーに参加しないつもりなのよ?」
「えっ!どうしてですか?レイリ先輩なら、ダンスの相手なんていくらでも…」

私がハーマイオニーに返事をしようとしたら、準備がバッチリなアリシアが女子寮の階段から遮った。「スピネット先輩…素敵ですね、そのドレス!」と褒められると、ウィンクをしながら「私はどんなものを着ても似合っちゃうのよね!ママ似だから」と得意顔でアリシアは言った。

「グレンジャーは、これから着替えるの?」
「あ…はい!…そう、です…」
「ねぇねぇ!髪型はどうするの?やっぱり巻いちゃう?」
「え!…髪の毛は、その…真っ直ぐにしたいなぁって…」

「まぁ!ステキじゃない!」
「なので、スリーク・イージーの直毛薬を使おうと…」
「まぁ!スリーク・イージーの!」

目を輝かせたアリシアが「ねぇ、お手伝いさせて? この私が、貴女を今夜一番可愛い女の子にしてあげるから!」と、ハーマイオニーに返事も聞かず、もの凄い勢いで彼女の腕を掴んで元来た道を戻って行った。私が目をぱちくりしていると、そこへジニーが来た。

「今、ものすごい勢いでハーマイオニーがアリシア先輩に連れて行かれちゃったけど…」

「あー…きっと、アリシアのスイッチが入っちゃったのよ」

私がそう言えば、納得したジニーが「アリシア先輩、人の髪の毛いじるの大好きですもんね!」と言った。そして彼女も「あたしも着替えなきゃ!」と言って、女子寮の階段を駆け上がって行った。ちょっとだけさみしいような不思議な気分になりながらも、私は作業を続けることにした。

七時を過ぎた頃に、雪の降る中遊び尽くしてきたのだろうと思われる男の子の集団が、温かい談話室へと入ってきた。双子のフレッドとジョージを筆頭に、リーや、ハリー達四年生もみーんな頬や鼻、耳まで真っ赤っか。

彼らの雪遊びに参加したのだろう、同じく四年生のトーマスくんとフィネガンくんは、雪で濡れた毛糸の手袋を暖炉の側まで持ってきて乾かしていた。

20130926
title by MH+
[top]