万物流転 | ナノ
42.はじまり2
朝、大広間へ向かう途中に、とぼとぼと歩く後輩三人組を発見した。黒色で癖髪の男の子と、赤毛で背の高い男の子。そして、もさもさとした栗毛をなびかせる女の子。いわずもがな、ハリーとロンとハーマイオニーの三人だ。

ホグワーツの二組目の代表に選ばれてからというもの、学校中の生徒たちから冷たい視線を浴びるハリーとロンに例年に勝る勢いで声をかけているのだが、ある時ハリーが言った。

「二年生で秘密の部屋の継承者じゃないかって疑われた時もあったから、僕はもう慣れっこだよ」

ハリーは嘲笑交じりの笑みを零したので、私はペチッと(もちろん力加減をして)彼の頬を叩いた。

その衝撃で、ハリーの掛けている丸眼鏡が廊下の先へ吹っ飛んだ。ちょっと、やり過ぎか感が半端なかったけれど、毅然とした態度のまま、私はハリーの緑の目を睨む。

その場に居合わせたお馴染みの二人とネビル(どうやら四年生はこの後、魔法薬学らしい)そして、双子とリー、アンジー、アリシア達みんなが目を白黒させて立ち尽くしていた。

でも、私はそんなことお構い無しに「ハリー、あなたはこんな異常な状況に慣れる必要はないのよ。怒ってしかるべきよ」自分の主張を彼に告げると、目の前の緑色が若干潤んだ。

「頬、痛かったね。ごめんね」

甲側の指先で、赤くなったハリーの頬を撫でる。短く謝ってから廊下の数歩先まで飛んで行った眼鏡を拾い上げ、ヒビの入ったレンズに向けて『Oculus Reparo』を唱える。

それを棒立ちのまま目を充血させる彼に渡すと、双子やアンジー達六年生見物人を引き連れて、その場から立ち去った。





そんなことがあってから、私は『ハリーが自分でゴブレットに名前を入れたのではない』と思っていることが、二人にもようやく理解してもらえたらしく、何かがあると彼らの方から私を頼ってくれるようになったのである。

「おはよう、ハリー。ロン、ハーマイオニー」

「「おはよう。レイリ」」
「おはようございます、レイリ先輩!」

今ではこのように、ハリーとロンからは名前で呼ばれるようになった。ハーマイオニーは、最後まで「先輩を付けなさい!」と二人に言い聞かせていたようだ。

けれど、私がこのことを了承しているのだから、今更呼び方を戻すつもりはないと、ハーマイオニーに告げた二人に歯噛みしている彼女の姿を見たことがある。

20130905
20131102修正
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