万物流転 | ナノ
41.はじまり
代表選手が決定した翌日からのハリーとロンへの風当たりは強いものだった。スリザリンはもちろんのこと、比較的温和な生徒の集まるあのハッフルパフでさえも、今は四年生の彼ら二人に攻撃的かつ批判的だった。

それに比例するように、セドリックはその二寮からもてはやされて、それの余勢を駆るように私にも好意的な感情が向けられた。けれど、私にはその気持ちも煩わしいものでしかなく、どうにかして後輩二人を励まそうと躍起になってはみたが、今の私では何の効果も得られなかった。

先日、変身術の授業中に呼び出されて杖調べを行った。そしてその時、例の嫌な女性記者と初対面を果たした。念入りにセットされたカールの髪型と、宝石で飾られたメガネが、もの凄くえぐい印象を私に植え付ける。

人は見た目で判断してはいけないと分かっているものの…こんな人だから、あんな記事が書けるんだろうな、とひっそりと心の中だけで嘲笑してやった。

杖調べを始める前に、スキーター記者がハリーだけを部屋から連れ出したのだけど(その時のロンくんったら、連れ去られるハリーを見つめて『置いていかないでよ!』と言う狼狽えた子犬のような目をしていたから、私は思わず彼の赤毛を背伸びして撫でちゃったの)待てども暮らせどもなかなか二人が帰って来ない。

妹デラクールの視線をチクチク感じながら、隣りに立つセドリックに「ハリーを捜してくるね」と断って、もう一度ロンの髪を撫でてから、私は部屋を出た。慣れたように気配を探れば、二人は箒置き場の中にいるらしい。

入るタイミングを伺っていると、ダンブルドア校長がオリバンダー老人を連れて歩いてきた。どうしたんじゃ?と言う目を向けられた(気がした)ので「ハリーとスキーター記者がここへ入って行ったのんですが、なかなか出て来ないもので…」と告げると、じっと半月型の眼鏡の奥のブルーの瞳を尖らせてドアを開いた。

眩しい光に目を瞬かせ目を細めるハリーの隣りで、すぐにスキーターがいかにも嬉しそうな声を上げる。「お元気ざんすか?」と手を差し出してダンブルドアに握手を求め、彼はそれを受け入れながら、ぐいと狭い箒置き場から引っ張り出した。

彼女から離れられることが嬉しくて仕方がないという様子のハリーはパッと私の方へ寄ってきて「僕、あの人にはもうウンザリだよ」と疲れた顔をして呟いたので、ポンポンと癖毛の黒髪を撫でてやった。俯いて大人しくなったハリーに「はやく行こう?」と言うと「…うん」と彼は頷いた。

代表選手の四人とその助手である私達の杖調べが全て終了すると、黒いカメラを持った男性が飛び出してきて「ダンブルドア、写真を撮りませんことには!」と咳払いをして言った。

私は正直、写真が苦手だ。デラクール姉妹は、嬉々として最前列に自分から進んで並ぼうとし(もちろん、そのカメラマンもそのつもりだったが)ホグワーツ校の異例の二人の代表選手であるセドリックとハリーがダンブルドアの隣りへ並ばせられた。

ハリーは自分だけ、こんな中央の目立つところに配置されなければならないことが嫌で、端の方へ逃げようとするロンのローブの袖をがっちりと握っており、結局ロンもハリーの隣りで写ることになった。

ダームストラングの代表選手であるビクトール・クラムは、写真撮影にも慣れっこだろうと言う予想を裏切り、私と同じようにこそこそと皆の後ろへ回ろうとしており、背の高いダンブルドアやイゴール・カルカロフの背中で鉢合わせした時は驚いた。

「意外ね。あなたは慣れてると思ってたのだけど」「ぼく、写真にがてなのです」と唇を歪めて囁いたのが、とても七年生の先輩には見えなくて、思わず笑った。

「笑わないで!にがてはにがて。きみもそう。でしょう?」と頬と鼻を真っ赤にして言ったので、私は目に涙を溜めながら「ごめんなさい、クラム」と言った。

20130905
title by MH+

*クラムの一人称「ヴぉく」は無いなと思います
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