万物流転 | ナノ
38.さいてい5
事件はハロウィン・パーティーの後に起こった。それは、彼の有名な生き残った男の子ハリー・ポッターがホグワーツ校からの二人目の代表選手に選ばれたこと――で、は、な、く!

しがない一介のグリフィンドール寮生である私が、なんと、セドリック・ディゴリーのアシスタントに任命されてしまったことである。

教師陣の前に立つ、代表選手。クラムは同じ学校の男の子を、フラーはあの妹ちゃんを、自分の助手に任命し、そして、セドリックが嬉しそうな顔のまま私の名を呼ぶので一瞬聞き間違いだと思った。そして、聞き間違いだろう。聞き間違いだったらいいな…と思ってそのまま流そうとした。

けれど、両脇に座るアンジーやアリシアに背中を叩かれ、失望を乗り越えていつもの調子を取り戻した双子に「早く行けよ!」と急かされたので、私はまだ上手く状況が理解できないままフラフラと前へ進んだ。たくさんの生徒の視線に晒されて、セドリックの横に立つハリーと同じくらい蒼白な顔になっていると思った。

「僕といっしょに闘ってくれますか?」

緊張した面持ちのセドリックが私の正面に跪き、棒立ちになっている私の右手を恭しく取った。その洗練された彼の無駄のない動きに、ホグワーツやボーバトンの女子生徒からは「きゃあ!」と悲鳴があがる。

狙ってやってんじゃないのか?と疑いそうになる私に「レイリ、お願い。僕に君の力を貸して欲しい」と小声で呟かれて「僕には君が必要なんだ」とはにかみながら、しかし目だけは真剣に言われたので、ついに頭は真っ白になった。

えぇいままよ!どうにでもなれ!と「私で良ければ、あなたの力になりましょう」と告げ、彼の手を取った。その瞬間、広間は割れんばかりの拍手に包み込まれ、ハリーが自分の助手にロンを指名し認証されたことを知っている生徒が何人いるのやら。

四人の代表選手とその助手達は、魔女や魔法使い達の肖像画が飾ってある小さな部屋へ押し込められた。そこへ、ずんずんとハリーに向かって校長先生やマクゴナガル女史、スネイプ教授。さらに、クラウチ氏、マダム・マクシーム、イゴール・カルカロフ、そして、最近ずっと避け続けていたアラスターが押し寄せた。

ハリーは校長に両肩を握られ「君はゴブレットに名前を入れたのかね?」と詰問を受けている。ダンブルドアの勢いがすごかった為、セドリックの隣りに立っていた私の方へすっかり萎縮したロンくんが寄ってきた。

マダム・マクシームが「セ・タァンポシーブル」と言い、フラーとガブリエルの方に手を置く。カルカロフが諂い声でクラウチ氏に「こんなことは異例だと思われますでしょうな?」と言い寄ったが「規則に従うべき」と一蹴りされて、瞳の奥をぎらつかせてハリーを睨んだ。

20130903
title by MH+
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