万物流転 | ナノ
36.さいてい3
真紅のカーテンから白い光が差し込み、朝が来たことを私に知らせる。ぺたぺたと身体を触り、自分が女に戻ったことを確認すると、私はちゃっちゃと荷物をまとめて、まだ寝息の聞こえる部屋を静かに出た。

女子寮へ戻るのも面倒だし、なんと言ってもまだ早い時間帯(こんな早朝に起きているのは私くらいだろうなぁ)であるので、危険かなと思いつつ(まぁ、いざとなればアンジーから貰ったこれで…)と、手にした芥子爆弾を握り、私は男子寮のシャワー室へ足早に向かう。

案の定、誰も利用していなかったシャワー室にて身体を清め、私はホクホクしながら再び双子やリーの部屋へと戻った。リーは布団をしっかりかぶって枕に顔を埋めてうつ伏せで眠っていた。枕元には、クィディッチチームの名前が羅列してある雑誌が置かれていて、寝る前に読んでいたことが伺える。

私にベッドを明け渡したジョージは、フレッドのベッドで寝ることになり、狭そうに身を縮めながら兄弟仲良く、ぐーすか眠っていた。ちなみに、寝相が悪いと噂のフレッドの両足がジョージの腹部に乗っかっていて、若干苦しそうな表情をしている。

起床するには、早過ぎると思う。けれど、私は熱いシャワーを浴びたことで目が覚めてしまったし、他の男子生徒も居るなかで女子である私がここへ居ても良いのかと考えれば、答えはノーだろう。私はフレッドのベッドへ近づき、寝苦しそうな顔のジョージの肩を揺すった。

「…ジョージ、ジョージ」
「…ん、?…あれ、レイリが、いる?」

「おはよう、ジョージ」
「…はよ。…ん、なんでレイリ?…僕、まだ、夢…みてる?」

眠そうに目を擦ったジョージは、起き上がろうとしてまたベッドに沈んだ。片割れの足が邪魔をして、起き上がれなかったのだ。

枕を抱きしめながら、むにゃむにゃ眠るフレッドの足を、よいしょと退けてやり、今度は手を貸して起き上がらせた。なんだかこの作業、以前にも隠れ穴でしたことがあるような…デジャビュ?

「…さわれる」

「…なに寝ぼけてるのさ、ジョージ」そう言いながら私は彼の手を掴みながら、昨日の晩のように今度は私が彼を立たせて本来彼が寝るべきベッドまで連れて行った。布団を整えてから、ジョージをベッドに座らせると「この通り、無事に女に戻ったから寮へ戻るわ」そう告げて立ち上がった。

「…ゆめ、なら…いいよね、」

ジョージが何かを呟くのを背中で感じたので、聞き返そうと思い身体を捩れば、右手を取られて強い力で引っ張られた。え、これって!ジョージ、起きてるんじゃないの!?

バランスを崩された私は、そのままジョージの胸へと飛び込みその勢いで彼と私は、わずかに温もりの残るベッドへと沈んだ。さらっと、白いシーツの上に広がる私の黒髪を掻き分けたジョージの手が、くいっと私の顔を持ち上げて、上を向かせる。

「…な、なに?」

「…レイリ、おやすみ――」

にっこりと、溶けそうな笑みをを満面に浮かべたジョージの顔がゆっくりと、まるでスローモーションのように私に近づいてきて、彼のくちびるが、私の額にくっ付いた後、少ししてから離れていった。

今の行為を、私の脳が理解しようとしているうちに、ジョージはそのまま眠ってしまい、私はついうっかり恥ずかしくなって赤く染まった頬を何とかしようと、手で顔を仰ぎながら急いで部屋を立ち去ったのであった。

20130903
title by MH+

*ジョージやりおった
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