万物流転 | ナノ
33.いたずら7
ダンブルドア校長の挨拶に始まり、それが終わると今夜は厨房の屋敷しもべ妖精が大盤振る舞いしたらしい、豪華でさまざまな料理が並べられた。

蛇寮のテーブルに固まるダームストラング校の生徒は、あの分厚い毛皮のコートを脱ぐと、下には血のような真紅のローブを着ていたので、スリザリンの中にグリフィンドールのシンボルカラーが座っているを見ると、何だか違和感を覚えた。

食事の間、私は双子に刺々しい視線を送りながらも、主に女子生徒から自分へ送られてくる妙にねっとりとした熱視線をビシビシ感じて、折角の料理の美味しさが半減する気がした。

するとそこへ「失礼しーます」と鈴を転がしたような声が響き、姉のフラーが止めるのを聞き入れず私の座るグリフィンドールのテーブルへとガブリエルが割り込んで来た。

「ブイヤベース食べまーしたか?」
「…い、いえ。まだですけど」

「そんな!おいしいのでーすよ。はい、口を開けてくーださい?」

「…が、ガブリエラ?私は自分で食べられますから!」
「ほーら、はやーくしてくーださい?…あーん!」

ガブリエラは、自分で皿に注ぎ分けたブイヤベースを、スプーンで掬い、湯気の立つそれを私の口へ近づけてきた。周りの生徒達がじっとこっちを見ている。なんという、辱め!

しかし、年下のしかも女の子なので断る訳もできず、私は大人しく口を開けた。それを見て満足したガブリエラは、嬉しそうに可愛らしい笑みを浮かべて、そのブイヤベースを私に食べさせた。

「おいしかったでーすか?」
「…はい、おいしかったです。ありがとう、ガブリエラ」

心の中では涙をのみながら、私は今の自分に出来る渾身の営業スマイルを顔に貼付けながらそう言えば、頭から湯気が出そうになるくらいボフッと顔中を真っ赤に染め上げたガブリエラ。そんな彼女が放心している間に、私はフラーへ目配せをして、妹の回収にあたらせた。

「ごめんなさーい。妹は、あなたのこと、好きなようでーす」
「…いえ、人から好かれるのは嬉しいことですから」

フラーに営業スマイルを貼付けたままそう言って、爆笑している双子とリーの脳天に鉄拳制裁を加えるべく、私は席を立った。彼らの元へと移動する間も、首筋に刺さる視線が鬱陶しく、早く殴ってやりたいと切に思った。

面貸せや、この野郎共!

20130901
title by MH+
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