万物流転 | ナノ
31.いたずら5
淡い水色のボーバトン校の巨大な馬車が天馬に引かれてホグワーツへ到着した時、湖の方からザバーンと音がして水面が割れた。その割れ目からは、まるで引き上げられた難破船の帆柱ようなものが突き出ており、次の瞬間大きな黒い船が姿を現した。

ボーバトン校の生徒達が次々に馬車から降りてくると、最後に巨大なおかっぱの女性が出てきた。彼女こそが、ボーバトン魔法アカデミーの学校長であるオリンペ・マクシームその人である。ダンブルドアが挨拶をすると、彼女は彼のことを「ダンブリー・ドール」と呼んで挨拶に応えた。

私とセドリックが、寒そうに震えるボーバトン校の生徒達の前に姿を現すと、ポッと頬を染める生徒が何人かいた。私の方を見てニッと笑ったセドリックが息を吸って大きな声で言った。

「初めまして!ボーバトン校の生徒の皆様。僕はハッフルパフ寮六年のディゴリーといいます。そしてこちらが」

「グリフィンドール寮同じく六年のウチハと申します。何卒よろしくお願い致します。 それでは、私達が温かい控え室の方へ案内致しますので、ついてきて下さい!」

私達がローブを翻して歩き出したところで、ダームストラング校の生徒達が校長のイゴール・カルカロフに連れられて船から、足場の悪い岩の階段をよじ登って、玄関ホールまでやっと辿り着いたようだ。

後ろ目でちらりと見えたダームストラング校の生徒達は、モコモコとした分厚い毛皮のマントを着ており、ボーバトンの華奢な生徒達よりも随分と温かそうだった。

そして、彼らの前でスリザリンの監督生ケネットとレイブンクローの監督生が私達と同じように自己紹介をして、控え室へ歩き出すその足音が聞こえてくる。

客人を各控え室まで案内し終えたところで、部屋の外では、ホグワーツの生徒達がわいわいがやがやと大広間へと移動している音が響いてきた。セドリックと「疲れたねぇ」と話をしていると、ボーバトンの一人の女子生徒がこちらへ来て私達に声をかけた。

「すみまーせん、あのー」
「はい、なんでしょう?」

セドリックが人受けの良さそうな顔をして振り向けば、肩より少し長いシルバーブロンドに、青い瞳を潤ませたかわいらしい女子生徒が立っており、首を横に振った。

「あなたーじゃ、ありまーせん。黒い髪の、あなたでーす」
「わ、私ですか?」

ビシッと指でさされ、驚いてまじまじとその年下と思われる女の子を見つめると、ポッと顔をピンクに染めてもぞもぞと何やら呟いた。耳をすませて聞いていると、鈴の転がるような声で、どうやら自己紹介を始めたようだ。

「わたーし、ガブリエール・デラクールといいまーす」
「えと…はじめまして、ウチハです」

「聞き慣れなーい、名前でーすね。ウチと言ーうのですか?」
「それは苗字で、名前はレイリと申します」

「レイリ!あなーたの名前は、レイリと言ーうのでーすね!」きらきらと青い目を光らせたガブリエールは、私の手をぱっと両手で掬い取り、みるみるうちに頬を紅潮させる。

どうしたものか…と隣りに立っているセドリックを見ると『もしかしたら、この子。今の君に気があるんじゃない?』と苦笑が返ってきた。苦笑いしてる暇があるなら、私を助けてよハンサム!

心の中で叫んだって、彼には聞こえないことは分かっていたけれど、叫ばずにはいられなかった。

20130901
20131102修正
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