万物流転 | ナノ
30.いたずら4
私の名前はハーマイオニー・グレンジャー。今年でホグワーツの四年生になりました。さて、今日は待ちに待った十月三十日金曜日。そう。ボーバトンとダームストラングの代表団が到着する日なのです!

魔法薬学の授業がいつもより三十分もはやく終わってしまったのは、とても残念なのだけど、私達は指示通りに鞄と教科書を寮へ置いてから、お客様の出迎えに玄関ホールへと集まって行った。

近くに立っているハリーやロンが「どうやって来ると思う?汽車かな?」「何で来るんだろう?箒かな?」と話し始めたので、私もその会話に加わって話しているとロンが「移動キーか?さもなきゃ『姿現わし』術かも!」と考えを述べた。

私はそれに溜息まじりで「ホグワーツの校内では『姿現わし』はできません。何度言ったらわかるの?」と言えば、ロンは「はいはい。そうでございました」と唇を尖らせた。不満に思いたいのは私の方よ!まったく…私はイライラしたわ。

マクゴナガル先生が一年生を先頭に並べて、生徒達を学年順にホールの両側へと整列させた。私達は四年生なので、前から数えて四番目に並んでいる。すると、列の奥の方から、女の子達が大好きなざわざわが始まって、徐々にその黄色い声が大きくなってきたの。

なんだろう?って思ったのは、ハリーもロンも同じだったみたいで、きょろきょろとしていると、校舎の奥から、男子生徒が二人がこちらへ来るのが見えた。

その二人は、ハッフルパフの監督生であるセドリック・ディゴリーさんと、私達と同じグリフィンドールカラーのローブに身を包んだ、見たことも無い…でも、すごく。すごく、かっこいい男子生徒が颯爽と歩いてきたの!

「なぁ、ハリー。うちの寮にあんなカッコいいやついたっけ?」
「………え?」

「ど、どうしたんだよ、ハリー?」

私の少し前に立っているジニーの耳も、彼女の燃えるような赤毛に負けず劣らず真っ赤に染まっているのが見えて、ロンの言葉にハリーはすぐさま返事が出来ないほど、あの人に見蕩れていたみたい。かく言う私も、ぽーっと、その男子生徒が歩いてくるのをじっと見つめていたのだけれど…。

きびきびと歩き「ウィーズリー、帽子が曲がっています!ミス.パチルは髪についた馬鹿げたものをお取りなさい!」とマクゴナガル先生は注意して前を通り過ぎて行く。

そして、その後をあの人が歩いたのだけど、その時に「パチル、取らなくて良いよ。先生はその大きさが気に入らなかっただけだから」と言って、杖を振って彼女の三編みの先についていた大きな蝶飾りをコインほどの大きさに変えた。縮小魔法かしら?

「あ、ありがとう…ございます!」
「パーバティ、よかったね!」

小麦色の肌を真っ赤に染めて、パーバティはその人にお礼を言うと「どういたしまして」という風に微笑した。彼女の隣りに立っていたラベンダーも、その笑みによってパッと頬をピンク色にして髪の毛を撫で付けた。

黒髪を後ろで一つに括っているその人は、黒曜のような瞳をスーっと滑らせると、私達の斜め上の方で視線を止めた。誰を見ているんだろう?と私とハリーとロンが振り返ると、そこにはロンのお兄さんである双子のフレッドとジョージが、ぎくりとした表情で汗をダラダラと流しながら立っていた。

「や、やあ!ご機嫌麗しゅう、ミスター!」
「その髪型、ビルみたいで、に、似合ってるよ!ミスター!」

どうしてか、焦る双子に対して「やっぱりな」と呟いたその人は「今晩は、愉快な夜になりそうだね。フレッドもジョージも、後からこのことを説明してもらうから、覚悟しておきなよ?」と二人に向かって声を低くして言った。

「「ヒッ!!」」

にやりと不敵な笑みを浮かべたその人に、フレッドもジョージも怯えたように顔を引き攣らせて、お互いにお互いの身体を抱きしめていたけど、どうしてかしら?

そう言えば、双子やアンジェリーナ、アリシアの傍にレイリ先輩がいないことに気付くと、私は『もしかして、あの男子生徒って――レイリ先輩?』とそう思いながら、去って行く彼の後ろ姿を見つめると、私が敬愛して止まないレイリ先輩の面影とが重なったので、私はピーンときた!

「私、わかったわ!あの人の正体!」
「ハーマイオニー!あたしも分かったかもしれない!」

鼻息荒く振り向いたジニーは、鳶色の瞳をキラキラと輝かせて私を見つめてきた。ひしと私は彼女の手を取り、答え合わせをするかのように名前を呟けば、一言一句ぴったりと彼女の名前を言い当てた。

「なぁ、あの人って誰だ?」
「ロン、まだ分らないの!?」
「エ!ジニーにも分かったのかよ!」

「ハーマイオニー。君も分かったんだろう?」
「えぇ、そうよ。ハリー」

私とジニーは得意げな顔をして、声を揃えて「あの人は、レイリ先輩よ!」と二人に告げた。ハリーもロンも、口をあんぐり開けて、信じられない!と言うように列から身を乗り出して、遠くの方まで歩いて行った先輩の後ろ姿を見ようとしていた。

そんな二人が面白くて、さらに、青くなっている双子をちらちら見ながら、私とジニーはにっこり微笑んだのだった。

20130901
title by MH+
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