万物流転 | ナノ
11.まぶしさ
がちゃがちゃと慣れない手付きの父親に代わり、ジニーがフライパンを持ち、ハーマイオニーが卵とベーコンを準備し始めた頃。私も彼女らに加わろうとして、さっき三人組が汲んできてくれた水で手を清めていると、三人ほどの足音がして、マントの入り口の布が開かれた。

「あ、あれ?レイリじゃないか!」
「チャールズ先輩!お久し振りです。お元気でしたか?」

「僕の方はぼちぼち。君も元気だったかい?」
「はい、双子の世話には少々手を焼かされていますけど…」
(俺たちはレイリに世話された記憶はねぇぞー!)

双子達の声は、まったく気にしてない風にチャールズ先輩、もといチャーリー先輩に向かって微笑めば「ははっ!」と溌剌とした声で先輩も笑った。

「それはよかった。君と僕がこうして会うのは卒業以来かな?」
「そうですね。私が二年生の時だったので…四年振りですね」
「もうそんなになるのか…通りでレイリもきれいになるわけだ」

「はいはい、ストーップ!そこまでー!」
「チャーリー!レイリを口説こうなんて、100年早いよ!」
「どうしたんだよ、二人して…僕は別に彼女を口説こうだなんて!なあ?」

久し振りのチャーリー先輩との会話に割り込んで来たのは、フレッドとジョージだった。それに、ジョージに至ってはチャーリー先輩から私を遠ざけようと正面から両肩をぐいぐい押してくる。不思議そうな顔をした先輩は、もはや傍観者となった兄のウィリアム先輩と弟のパーシー先輩に助けを求める。

「相変わらずチャーリーは天然タラシだな」
「どういうことだい、ビル?」
「そのままの意味だよ」

パーシー先輩は何も答えずそのままテントの奥へ行き、彼の疑問に答えたウィリアム先輩はさらに続けて「君のその天然タラシに在学中は一体どれだけの女の子が泣かされたか…」と、双子を彷彿とさせるような芝居がかった口調で溜息を吐いてみせた。

チャーリー先輩は「分らない」と言いたげな目をして兄を見ていたが、ちょうどその時、外から「よう、よう!」と声が聞こえ、とても目立つ服装(鮮やかな黄色と黒の太い横縞のクィディッチ用のローブ)の短いブロンドの髪の魔法使いが現れた。

私はそのルード・バグマンの登場に、皆が注目している時にスルリとテントを抜け出した。そのことに気付いたのは、ありったけの愛情の籠ったウィンクで私を見送ってくれた長男のウィリアム先輩だけだった。

テントを出て来た道を戻っていると、霧の向こう側に見知った人影を発見した。「セドリック!」と声をかければ、その人影はこっちに歩いてきて私を見つけるなり「もう帰ってこないかと思ったよ」と言って私を抱きしめた。え?ちょ、一体ドウシタコレ。

私が内心テンパっていると「ホットケーキを焼いたんだ。父さんが僕らのテントで君の帰りを待ってるよ」とパッと身体を離された。その時近くで見上げた顔は、はにかんでいた。正直なところ私は彼のこの顔に弱いのであった。

20130825
title by MH+
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