万物流転 | ナノ
10.ともだち7
私達が両手いっぱいに火のための燃料になる小枝やらを集めてテントへ行くと、双子の背後に私の姿を見つけたジニーが驚いた顔で私を迎え入れてくれた。アーサーさんは、やっぱりか、と半ば呆れたような顔をして双子を見ていたけれど、私に視線を移すと笑顔になって迎え入れてくれた。

「ようこそレイリ。狭いところだけど、ゆっくりして行くといい」
「ありがとうございます。ですが、私は一通りのことが済んだら戻るつもりです」

「「えー!あんな口無しのところに戻るのかよレイリ!」」
「口無しって言わないでくれる?セドリックって良い人よ?それにふたりの時はよくしゃべるし…」

「レイリさん!その話、詳しく聞かせてっ!!」

興味津々の様子で聞いてきた彼女の向かって「ジニー!」とフレッドが傍らのジョージにちらりちらりと視線を送りながら咎めるように呼んだ。ジニーは、はっとしてから曖昧に笑い、私には『ま・た・こ・ん・ど』と口ぱくで伝えてきた。ジョージは一時停止しながらも、ぎこちない動きでしゃがむ父親の隣りまで行き薪を焼べていた。

私とフレッドも彼に倣って拾ってきた枝を火元に邪魔にならないところへ置くと、ちょっとだけ気まずい空気がテントの中に漂っていた。すると、マッチ箱を手にしたアーサーさんが、ぱっと顔を上げて立ち上がり私に向かって「そういえばレイリ!」と言って、手招きをした。

なんだろう?と思いながらも、彼に従ってテントの端へと移動すると、小声で「正式に闇祓いになったんだって?アラスターから聞いたよ。おめでとう」と満面に笑みを浮かべながらこっそり言われた。「どうしてそのことを」続きを言おうとしたら、シーと人差し指を口に当てて静かにするように指示された。それから「子供達に聞かれたら厄介なことになるだろう?」と茶目っ気たっぷりなウィンクをした。

私とアーサーさんが、テントの隅っこで何やら内緒話をしているのを、双子とジニーは聞き耳を立てている様子で、ちらっと彼が振り向くと、三人は慌てて視線を逸らした。「これは、わたしとモリーからのお祝いだよ」と私の手のひらにコロッと手渡されたのは、真珠のように輝く小さな石のついたネックレスだった。

吃驚して彼の顔を見上げて「こんな高価なもの頂けません!」と音量には気を付けて突き返そうとするも、何やらにこにことするアーサーさんは、それを良しとせず「それはただのネックレスじゃあ、ないんだよレイリ?」と得意げな顔をして「実はね…」と含んだ笑みを浮かべて話そうとした時――

「「「ただいま!」」」

例の三人組がヤカンと鍋をぶら下げて戻ってきた。「遅かったなあ」と入り口付近にいたジョージが言い、それに答えたロンが「いろんな人に会ったんだ!」と水を下ろしながら言った。そして、続け様に「まだ火を熾してないのか?」と言うと、すかさずフレッドが「親父がマッチ持ったまま、テントの隅でレイリと内密な話をしててね」とじと目で言った。

「やれやれ、フレッドと来たら…すまないが、この話の続きはまた後でね」そう言ってアーサーさんは竃の方へ歩いて行った。水汲みの他のふたりも、ロンと同じように水の入ったヤカンと鍋を置き、しばらくはアーサーさんが火をつけようとする作業を子供達で黙って見ていたが、マッチを折ってばかりいて、もう見てらんない!となったハーマイオニーがマッチの付け方を指南し始めるのにそう時間はかからなかった。

20130825
title by MH+
[top]