万物流転 | ナノ
9.ともだち6
アーサーさんのカウントダウンの通り、時刻ぴったりにポートキーは発動した。風の唸りと色の渦の中を、ぐりぐり全員で進んで行く。臍の裏側が何ものかによってグイッと前方に強く引っ張られるようなそんな奇妙な感じがした。煙突飛行もだけど、私は、ポートキーも好きになれそうにはない。

三人組と双子がドサッと重々しい音を立てながら地面に転がるのが下の方で見えた。ジニーはアーサーさんに手を引かれて、そして私はセドリックに肩を組まれて、まるで宙を歩くようにして着地した。フレッドとジョージは何らかの差を見せつけられ、セドリックを睨み付けていたが、私は気付かなかった。

「ウィーズリー、ウィーズリーと…あぁ、あったぞ。アーサーたちはここから四百メートルほどあっち。歩いて行って最初に出くわすキャンプ場だ。管理人はロバーツさんと言う名前だ。 ディゴリーさんは、それを通り過ぎた二番目のキャンプ場。ペインさんを探してくれ」

くたびれた様子の魔法使いに「ありがとうバージル」とアーサーさんはお礼を言った。霧の立ちこめるキャンプ場を歩く。少しして、アーサーさん達のキャンプ場に着いたみたいでジニーとハーマイオニーにお別れを言った。しばらく道なりに歩いていると、後ろから二つの気配がして私が振り向く前に口を塞がれた。

「ん!…んーんっ!!」
「しー…静かに。俺たちだってレイリ」

「たった今、あの野郎…じゃなくって、セドリックには話をつけてきた所だから僕たちのテントにおいでよ」

今ジョージが『あの野郎』って言ってなかった?あれ?私の聞き間違いかな?フレッドに後ろから口を塞がれているために返事が出来ず、コクコクと頷けば、目の前にいるジョージが安心したように笑った。いい加減、息が苦しくなってきたので、後ろの人にはエルボーを喰らわせて腕の拘束を解いた。

「あなた達ねぇ…忘れてるのかもしれないけど、私これでも一応女の子なんだから、後ろから口を塞いで身動きを取れなくするとか、そういう強姦紛いなことをするのはどうかと思うのよね。それなのにあなた達と来たら…ねぇ、私の意見に何か反論ある?」

私が仁王立ちして言えばみぞおちに私の強力なエルボーの攻撃を受けたフレッドが「…いえ、ないです。女王様」と涙目。そしてうずくまる片割れに付き添って震えるジョージが「…強引なことをして、申し訳ありませんでした。レイリ様!」と謝った。

「今度やったら、はったおすからね」とやっと微笑んだ私に安堵の息を吐いた双子は、にょきっと立ち上がって「レイリも薪を集めるのを手伝ってくれるかい?」と調子良くフレッドが言った。「どれくらい集めたらいいの?」と聞けば、今度はジョージが「出来るだけたくさんさ!」と笑った。

20130824
title by MH+
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