万物流転 | ナノ
8.ともだち5
「みんな、彼はエイモス・ディゴリーさんだよ。『魔法生物規制管理部』にお勤めだ。それに、息子さんのセドリックは知ってるね?」

アーサーさんがエイモス氏を皆に紹介した会話に、セドリックの名前が出てきたので、彼と私は見つめ合って互いに頷き、彼は木から飛び降りた。そんなに高くないので、軽々と着地したが、ジニーは突然のセドリックの登場にびっくりして、隣りのハーマイオニーの服の袖をぎゅっと握ったのが見えた。

「やあ。驚かせてごめんね」とセドリックが言ったので、ジニーとハーマイオニーはぽっと頬を染めた。「全部君の子かね、アーサー?」との問に「まさか。赤毛の子だけだよ」とアーサーさんは子供達を指差した。

「末の娘のジニーの隣りの子がハーマイオニーで、ロンの友達。そして、こっちのロンの隣りにいるのが――ハリーだよ」
「おっと、どっこい」

「ハリー?あのハリー・ポッターかい?」と目を丸くして聞いてくるエイモス氏に、「あ――うん」と落ち着かない様子で返事をするハリー。クスクスとそんな二人を木の上から眺めていると、アーサーさんが「本当だったら、ここにレイリもいる予定だったんだが、生憎予定が合わなくてね」と言った。

セドリックが、今がチャンス!とばかりに木の上にいる私に目配せをする。こくりと頷き、飛び降りる態勢になった時、はたと気付いて踏みとどまった。

(あ。私今日あれだわ、シフォンスカートだわ。それも膝上のやつだ。いやいやいや、もちろんアンジーおすすめの『これ一枚で温か!トレンカ』穿いてますけどね。パンチラなんぞのサービスショットにはならないから大丈夫だけどね?この格好で飛び降りたらはしたなくね?スカートふわってなるくね?)

という風に三秒間脳内で思い悩んだ後に、思い切って忍者のように(いや、事実忍者なんだけど)私は木から飛び降りた!

シュタッと、セドリックの隣りに、かっこ良く着地を決めた私はアーサーさんの方へ向き直り「おはようございます、アーサーさん」と清々しいほどの笑顔を浮かべて言い切った。双子は、ぽかんと口を開けているし、ジニーとハーマイオニーは目を白黒させている。ドッキリが成功したので、彼と顔を見合わせて笑った。

固まる双子をよそに私は近寄ってきた女子二人に、一昨日のディゴリー夫人のようにどうしてセドリックと一緒にいるのかをあれこれ尋ねられたが「さあ、あともう一息だ!」と言うアーサーさんの言葉を聞いて、曖昧に微笑み先を急いだ。

ごつごつした岩に覆われた頂上まで来ると、片足だけの古いブーツが置かれていた。どうやらこれがポートキーらしい。ひとつのブーツを全員で取り囲んでいるこの光景を非魔法族の人が目撃したら、どんなに気味悪がるだろうとちょっと思った。

20130824
title by MH+
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