万物流転 | ナノ
7.ともだち4
ストーツヘッド・ヒルの天辺を目指して私達は巨木の間を縫うように歩いていた。大きなリュックサックを背負って、私とセドリックの前を歩くエイモス氏は、息が切れている。そんな父親を見て「休憩しようよ」と何度かその背中にセドリックは声をかけたのだが、エイモス氏は首を縦に振らず、星空の下を何時間もかけて歩いた。

ごつごつとした根っこがむき出しの地面を注意しながら進んでいる時や、黒々と生い茂る草の塊の中を歩いている時、セドリックは私にも気を配ってくれていた。うっかりして、木の根に足をひっかけてつんのめりそうになるのを横から支えてくれたし「レイリは休憩しないでも大丈夫?」と小声で何度も尋ねてくれた。

私は、彼が想像しているよりもずっとたくましい女の子であるので、彼の心配はご無用!の状態であったが、さすがにノンストップで歩き続けるのは父親の意地を見せつけたいエイモス氏の足の負担にもなるだろうと言うことで私が折れて「少し、休憩しませんか?」と提案した。

息子の声には耳を傾けなかったエイモス氏であったが、私のこの提案を待ち望んでいたかのように、くるりと汗だくの顔が振り向いた。彼は、リュックサックの中から妻の入れたハーブティーのポットを取り出して、魔法で出したカップに注いで息子と私に手渡した。

「もう少し歩いたところで待ち合せをしているんだ」と言ったエイモス氏はにこにこと人の良さそうな笑みを浮かべて、冷たいハーブティーをごくごく飲んだ。飲み終わったカップを片付けて、ポットをリュックにしまった彼は、足を二回、三回手で揉んで立ち上がった。

またしばらく木々の間を歩いて「この辺りなんだがなぁ」ときょろきょろする父親を見て「僕、木に登って見てみるよ」とセドリックが言ったので「あ!私も行く!」と彼の後に続いて木に登った。「レイリ、危ないから来ちゃダメだって!」と彼は言ったが、お構い無しにするすると登った。

本当は、手を使わずにだって登れるんだよ。だから、手を使って木を登るなんて朝飯前なのさ!…と、そんなことをセドリックに言い出せるはずもないので、私は笑って「いいの。私も登りたいから!」と言っておいた。一瞬だけキョトンとした顔のセドリックは、再び笑った。

「あ、あれってもしかして?」
「え?どこ?何か見えたの?」
「父さんの待ち合せの相手は、ウィーズリー一家みたいだよ」

セドリックが笑みをこぼしながらそう言った時、アーサーさんの声で「エイモス!」と呼ぶのが聞こえた。ジニーとハーマイオニーが手を繋いで歩いてきて、頭を下げている。その後ろにはちょっと機嫌の悪そうな双子と、眠そうなロンと状況の分かっていないハリーが続いた。

「君が木の上から登場したらびっくりするだろうね!」セドリックは、悪戯をひらめいた時の双子のような顔をして、声を潜めてクスクス笑った。私もそれに同調して、いつこの木から飛び降りようかとタイミングを計っていた。

20130824
title by MH+
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