万物流転 | ナノ
43.うらぎり10
私は校内の見回りをしながら、これからのことを考えた。バックビークのことはあの二人がどうにかしてくれるとして、問題はその後だ。

スキャバーズとしてロンのペットになりすましたピーター・ペティグリューのこと。ルーピン教授が飲み忘れるであろう脱狼薬のこと。シリウスとスネイプ教授のこともそうだけど、もう一つ。

新規に闇祓いとなった私に言い渡されたとある任務のこと。

もう頭の中がいっぱいいっぱいでパンクしそうだった。策を練っても手段や方法を考えても、生まれいづるのは不安と『もし失敗したら』と思ってしまう弱い自分だった。

未来のストーリーが分かっていることが、こんなにも苦しいことなのだと、私は忘れていたのかもしれない。

私は、こちらへ来てから、随分と悠長になってしまった。危機が差し迫った今にやってようやく、私は彼らを送り出すべきじゃなかったと後悔している。

しかし、私が止めたとしても彼らは行っただろう。そう思うのは私の言い訳に過ぎないのだろうか。目頭が熱い。喉の奥から何かが競り上がってくるみたいだ。

「うっうっ…」私はふらふらと廊下の壁にもたれて、そのままずるずるとしゃがみ込んだ。空はすっかり分厚い雲に覆われて、遠くの壁に取り付けてある松明の火だけが私の頼りだった。

けれど、私のこの臆病な涙を隠してくれるなら、あの火ですら消えてもいいと思った。





一体私は、何分の間そこでうずくまって泣いていただろうか。辺りはすっかり夜の帳が下りていて見回りの時間も終わっていた。そして、立ち上がった私に白い何かが飛んで来た。

あぁ、これは!
シリウスからの通信紙ではないか!

『今夜、決行する。今日までありがとう。協力感謝する』

短い文面だったが、彼が何を決行するのかが分かっている私は無我夢中になって、ここがホグワーツの廊下だと言うのに瞬身の術を使って女子寮へ飛んだ。

幸いなことに、ルームメイトが使っているどのベットにも天蓋から垂れる真紅のカーテンが引かれており、それは皆が眠っていることを意味している。

私は、ベッドの脇にグリフィドールのローブをかなぐり捨て、変化の術を使った。

白煙の中から現れた私は、まるでディメンターのような深いフード付きローブを羽織り、巻物から暗部時代に使っていた猫の面を取り出しそっと顔を覆った。杖は、ローブの下の忍服の腰に差し込んだ。

私は冷たい夜の闇へ窓から飛んだ。

20130818
title by MH+

*走れ走れ走れ
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