04話 心境の変化



「あんなーここタッチしてーそこににそのカードしゅっと通してーそんでー」
「わかったから!何回同じこと言うんだよ」
「えー、あはは、だって哀原きゅんがついてきてっていったー」
けたけた笑う遥に、やっぱり一人で来ればよかったかな、なんて哀原は考えてしまったのだった。周囲からあびる視線はとくに気にしないが――
『あいつ誰?すげーかわいーじゃん』
『でもあの連れなんだよ…不審者?』
『きめえ…話しかけてーのによー…どけよあいつ』

「…」
遥が悪口を言われている。
それがとてもいたたまれない。巻き込んでしまう事になったか、と溜息をついたとき食堂がざわめきで揺れた。
「…?」
「うはは、生徒会ちゃんが来たんじゃね?」
「生徒会…?」

野太い歓声と、男がどこからどうやって出すんだ問う位の甲高い声が食堂に響く。
「あはは、あははは、あはは」
「ちょ、遥怖い!何ずっと笑ってんの」
「んー…いや、顔見たくねー人いるんだもん、てへ!」
「てへ!ってきもいよ!なんで?誰?」
哀原が尋ねても遥ははぐらかすばかりである。最終的には、ウェイターが運んできたカレーライスを食べ始めた。

「…」
マスクを引っ張って外した遥の顔は妙に整っているように見えた。哀原は何も言わず自分に運ばれてきたハヤシライスにスプーンをいれる。
「あ、あの子じゃない?編入せー本当にサングラスしてるよ副会ちょ!」
「だからそう言ったと思いますが」
「うわ…マジだ」
「…き…も」
「あ、いまのはわかった。きもい!だ」
わらわらと哀原の周囲に集まってきた生徒会役員を見、遥は瞬時に立ちあがって人込みにダイブした。カレーのはいっていた皿を見れば空になっている。
「速ッ!!って、え、あ、遥!?」
「あ、逃げちまった」
庶務の四郷が人ごとのように言った。


「あのルックスで僕たちと接触するのは危険でしょうからね」
三藤が哀原を見ながら言った。
「はじめまして哀原君。僕は生徒会副会長の三藤弥生と申します」
にこりともせずに三藤が言うと哀原はぺこりと頭を下げた。
「あ、哀原賢人です。あの…俺、遥追いかけたいんですけど」
哀原は遥が置きっぱなしにしたマスクを片手に言った。

「…あんまり畏縮しませんね」
「はい?」
副会長は7:3眼鏡という優等生スタイルではあるが目つきが悪く更にその地位から一般生徒には恐れられることが多いだけに、全く変わらない哀原の態度には驚いた。
「いえ…御厚意で話しかけてくださったのに、畏縮なんて」
「…八宮」
「ん?なあに副会長〜」
「あの子超いい子ですね」
「そうだね〜相変わらず三藤ちゃんはああいうタイプに弱いね〜そこ弱点だよね〜」

八宮と三藤がこそこそ話しているうちに五色塚と四郷は哀原の隣の席を陣取った。
「なあ、哀原だっけ?」
「あ、は、はい」
「俺同じ一年の四郷卯月。な、さっきの奴さあ、なんでサングラスしてんのか訊いた?」
「あー…(頭の病気とか言ってたな)いえ知りません」
哀原はきらびやかな面々に囲まれながら思った。
皆いい人だと言う事はわかる。だがしかし。

「(なんか遥といた時の方が楽だった)」


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