04話 ・・・



「あ・い・は・ら・きゅん☆」
「…なに、きもい」
「うひゃはは、きもいって言われた――いやんひーどーいー」
「うぜえ…」
部屋に戻れば当り前のようにマスクの予備を装着しサングラスをかけたまま遥はいた。何故か参考書片手に。

「大変だったんだぞ」
「へーボタン百連打。あ、ネタ古い?」
「古い」
「ひはははは」
「…はあ」

先ほど感じたのはやはり間違いだったかもしれないと思いながら、哀原は明日の入学式に向けての準備を進めていく。
副会長の三藤によれば、明日新入生歓迎会が同時進行されるらしい。

「なあ、遥」
「ん?なァに〜哀原くん」
「新入生歓迎会って何すんだろ?」
「さー俺しんないよーだって編入生だもん。しょくどーとかはさァ、哀原きゅんより先に行ったから知ってたけどォ」
「…」

まあ、それはそうだろうと思う。

編入生同士同室になったというわけだ。

「なあ、遥。今度今日みたいなことあったらさ」
「…んン?」
「逃げないでちゃんといてくれないか」
「……あは、なあに寂しかった?寂しかった?んもーあたしがいないとなにもできないのねっ!」
「違う」

ノリがうざいが、根はいいやつ(多分)なのだと解釈して哀原は話を進める。

「俺さ、あんま美形の人とかに囲まれるの好きじゃないんだ。…周りの視線もあるし」
「オー哀原きゅん。君は自分の顔を鏡でみたことはないのかい?ええ?」
「…俺はいいんだよ!どーでも!」
「逆切れされちゃったーきゃー唯人こわーい」
「だから、一緒にいてほしいんだけど」
「え、スルー?そこスルーなのん?」

自分と一緒にいれば恐らく、遥に周囲の目がいってしまう。しかし哀原は今迄この顔のせいでまともな友達ができたことはない。

「(別に遥まともじゃないけど…)駄目かな」
「駄目かなー俺被害被りたくないもんッ。生徒会とか論の外〜イエーイ」
「…」
「うん、そんな子犬みたいな目で見るのやめてくれないかな!心は傾かないぞッ!」

遥はマスクの下で軽く笑った。
体裁なんてあまり気にしていなさそうな格好で、正確なのにもかかわらず生徒会との接触は避けたい。その遥の真意が哀原にはあまりよくわからない。

「わかったよ〜哀原きゅん〜、いいこと思いついた〜」
「えっ何?」
「一緒に逃げりゃあいいんじゃね?あれ?俺天才じゃね?これいいじゃん?」
「逃げる?」
「美形から〜愛の逃避行〜☆なんちってえ、きゃは☆」

ふざけたように言う遥だがようするに、生徒会を回避して哀原と自分に周囲からの害が及ばないようにしようというのだろう。なかなか考えているようだ。

「わかった、そうする」
「うん、そうしよーあー俺ねむいわー風呂はいってくんね〜覗かないでね!!絶対にね!」
「覗かねーし…」

確かに素顔は気になるがそう言われると覗く気になんてなれなかった。気色悪くて。


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