16話 救いの手




(遥視点)

「っ!」

ガン、と強い音がした。
視聴覚室の扉が、殴りつけられているようだ。

「…まさか風紀委員長か?」
星谷が焦り出すが――瞬間、ドアが半壊し、誰かが部屋に入ってくるのが見えた。

「っ…」
「あ…五色塚、せんぱ」

そこには、五色塚先輩と、生徒会の人たちがいた。
「いましたね。鬼島に報告を。八宮!」
「は〜い。皐月さっさとそいつぶっとばして〜キモイから」
「…って、る」

五色塚先輩は、星谷の顔面にけりをいれ、吹き飛ばした。相変わらず、この人は強い。兄の後輩なだけはある。
そういえば、この人もだ。
俺の事を、顔で見たりしない。

「大丈夫ですか、遥…会長。今、鬼島がきますから」
三藤副会長は、俺の制服を着せなおしてくれた。体が震える俺を、どうにかしようとしてくれている。

「全く。後輩のくせに、三藤副会長に迷惑かけるなよ」
「卯月。会長に何言うんですか」
「…相変わらず上下関係に弱いんですね、副会長」

ああ、この人達もだ。
俺を顔で見てない。

そのことにびっくりして、なんだかさっきまでの恐怖を忘れそうになってしまっている。

「…?どうしました。目を丸くして」
「あ、いや…俺…その」
「あなたが五月蠅くないと変な感じですね。あのウザキャラはどこいったんですか」
「…」


なんだろう。
俺の近くにも、こんなに顔にこだわらない人がいたんだな、と。

ちょっと安心した。

俺の世界って、狭かったんだなぁって。


「遥大丈夫!?」
「あ、加佐見さん…」
「委員長はすぐ来るからな。ああ、もう。俺、お目付役だったのに、悪い、今日は補修で」
「いえ…」

加佐見さんもだ。
なんでだろう。あんな目に会ったばっかりなのに、心があったかい。

目から先ほどとは違う涙がこぼれた。


(27/33)
←prev next→


[List]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -