11話 告白




「好きです!生徒会長!」

とかいう生徒を目の前に遥は困り切っていた。放課後、仕事を片付けこれから風紀に書類を提出しようと言う時に捕まってしまったのはチワワの集団。

「あっはーん、ごっめんねーん、俺ぇ、興味ないからァ」
「夜のお相手だけでもいいんです!」
「うん?」
なにそれ、夜のお相手って。…?添い寝かなんかすか?そんなふうに思考がとんでいると、がばっとだきつかれ、ぞわぞわと鳥肌が立つ。

「やめろ!」
思わず怒鳴り突き飛ばしてしまった。
「かい、ちょう…」
「やめてくれ…」
嫌なトラウマが脳裏をよぎる。


『好きなの、遥君のことが、だから、その人は――』

女の声が、頭に響いた。告白されて、断ると全く関係のない人を傷つけられた。
あんなことはもう二度とあってほしくないのに。

「俺は、断ったと思うけど」
「…ご、ごめんなさ…」

遥のあまりの剣幕に、チワワ男子が真っ青になり逃げていく。しかし、その遥の顔もまた真っ青だ。
「っえ…」
廊下にしゃがみこみ、口元に手を当てる。一般生徒も多く通る廊下なので人通りはあるはずだが、幸い今は誰も通っていない。
「(吐きそう…やっば)」
トイレまでなんとかしないと、と思っていると廊下の端から名前を呼ばれた。

「…ゆい、と、くん?」
「…ごしきづかせんぱい」
走ってきたのは書記の五色塚皐月だ。
「…だい、じょぶ?」
「……じゃないです」
お互い、小さな声でのやり取り。やがて五色塚は、遥の腕をつかむと、そのまま体を抱き上げた。

「えっ。ちょ…」
「ほけ、しつ」
そのまま物凄いスピードで走りだす。
流石、と思うのは少なからず面識があるからだ。

五色塚は、遥の兄が昔トップをはっていたチームの現総長。
昔は家に遊びに来ることもあった。

「…な、か、あった?」
「…」
何かあったか、と訊いているのだろうと思いながら、遥は五色塚の肩口に顔を埋めた。
昔、兄がいたころの雰囲気か匂いか、なにかを五色塚から感じる。
「(落ち着く…)」

鬼島といるときと同じような安堵感に、唯人は目を閉じた。


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