10話 ・・・
(遥視点)
廊下を歩くとひそひそ声が嫌でも耳に入る。
「…チッ」
舌打ちをひとつおとして向かう先は食堂だ。とてつもなく憂鬱だけど、俺はいまから食堂で飯を食う。…ウザキャラのまんまでいきたいのに、理事長のせいでそれもできなくて。
これじゃ、この学園に来た意味がない。いじめられてたほうが、ましだったというもんだ。
「お、唯人じゃねえか」
「!鬼島さん…!」
廊下がざわつく中、俺は鬼島さんに駆け寄った。風紀委員を従えていて、後ろの数人がちらちら見てきたきがした。
「こんにちは、今からお昼ですか?」
俺は自分が、鬼島さんに会うととてもテンションをあがることを知っていた。ていうか、今もそう。テンションハイ。
「ああ、一緒に食うか」
「「「えーっ!」」」
風紀委員たちから何故か驚きの声が上がった。その中にいた加佐見がにこにこしながら「気にするな」と口パク。
「え、と…いいんですか?」
「ああ、来いよ」
ぎゅ、と腕がつかまれる。顔が熱くなるのを感じた。
『すげー、会長あの風紀委員長と…』
『かっこいー…きれいすぎる…はぁ』
『一回抱きてえ…』
「…(ギロリ)」
『ひっ!?』
「あの…鬼島さん?どうかしましたか?恐い顔して…」
有頂天の俺には周りの声がちっとも聞こえない。
「いや、なんでもねえよ。来い」
「はいっ」
生徒会長になってから一週間。前から理事長の手伝いと言われてしていた仕事は実は生徒会長のもので、それを存続していく形で生徒会長をすることになっていた。
知らずに生徒会長探してた俺って…。
それに気づいていた鬼島さんは、どうやら俺の筆跡と生徒会から回ってくる書類(俺が騙されてしてたぶん)を見て、俺が生徒会長だと断定したらしかった。
哀原キュンは完全なる勘だったらしいけども。
「…鬼島ァ」
「げ、甲木…」
食堂に行くと江二さんと鉢合わせた。
「よぉっす、甲木ちん☆」
お元気?とふざけたノリでごあいさつ。江二さんは眉をひそめて、それから何故か鬼島先輩を睨みつけた。あれれ〜?
「…あんたB専門だろぉが」
…あれ、今聞いたこともないような江二さんの声が…えぇ…?
「後輩可愛がんのは別だろうが。な?唯人」
「え、ええと、はいっ」
可愛がってもらってる自覚があるので、顔があつくなってしまった。うわー…。
ていうか、江二さん恐いよ…。
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