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(蜂須視点)

身長170センチないくらいの、もそもそ動くそいつはなんか知らんが俺に話しかけてきた。俺とそいつでは身長差が結構あるんだが、上から見るともじゃもじゃした髪が人工のものだとすぐにわかった。

「…うーん、雄利ちゃーん。何、こいつ」
「……例の編入生です」
「ほー。俺の嫌いなタイプの。にしても雄利久しぶりじゃねぇかよォ。いちゃつきたいんだが」
「周囲の目を気にします、ていうかしてください」

もじゃもじゃを無視して、雄利ちゃんと尻を撫でる。相変わらずいい尻してんなこいつ。
そんなことを考えていると、もじゃもじゃが大声でわめき始めた。

「なんだよ!雄利の友達なのか!?俺は狭間昇陽だ!お前は!?ちゃんと自己紹介できないなんて最悪だぞ!」
「……」
「ひぁ、そ、総司さん無言で耳なめないでください…!」
「そろそろ敬語やめろよォ」
「な、なめるなバカっ」
「一気にくだけたな」

雄利の耳を甘噛みして、べろっと舐めると食堂の外野から悲鳴があがった。
そういや、雄利は生徒会長で人気があるとか聞いたことあるようなないような…。

「無視するなよ!それに、お、お前らそういう関係だったのか!?」
雄利といちゃついていると、もじゃもじゃが再びつっかかってきた。

「あーん?どういう関係に見えるんだよ」
「だから!!せ、セフレだろ!!???そんなの最低だ!!」
「は?高校生がそんなもん作るかボケ俺はまだ童貞なんだけど処女じゃないけど」
「えっ」
「えっ」
「え…」

なんだ今の怒涛の「えっ」は…。
雄利も大河もモジャモジャもなに驚いてんだよ。
「雄利ィ?」
「え…総司さん、童貞とかウソこくなって…」
「嘘じゃねーよ。俺お前に後ろのハジメテ奪われたのが性交渉初体験ですが」

何故か食堂がしんとしていて、俺の性体験暴露会になっているような気がするんだが。
「…何、お前童貞差別派?童貞なめんな馬鹿」
「そんな派閥聞いたことねーけど、普通に考えて…あんたは、その」
「んん?」
「け…経験豊富そうに見えると言うか何と言うか」
雄利が言いにくそうに言った。
「え〜総長そんなにえっちく見えちゃう〜?」

にたりと笑って、雄利の腰を撫でる。
確かに俺は童貞だが、一応前座までならかなり経験はある。しかし、最後までいったことはない。

何故か。
何故だか女とやろうとしても勃たなかったからだ。しかし男が好きだったからではない。女が嫌いだったからだ。

「おい!嘘はいけないんだぞ!」
俺が遠い目をしていると、モジャモジャに頭をはたかれた。ざわりと周囲が揺れる。チワワ男子どもがモジャモジャを非難しているのが聞こえた。
が、そんなことは気にしている場合ではなかった。

「――抉る」
「え?」

気付くと俺はモジャモジャの側頭部に鋭いけりを叩き込んでいた。モジャモジャはふっとんでテーブルにつっこみ、シチューまみれになって倒れた。
丁度雄利もモジャモジャに殴りかかろうとしていた体勢だったが、俺の早業にぽかんとしている。

「え、総司――」
「モジャモジャモジャモジャする上に俺と雄利ちゃんの会話を妨げ俺の素晴らしい頭を殴るたぁ何様だこのやろう。――その中身の入ってない頭抉って中にバター詰めてやろーか」

倒れたままのモジャモジャの頭の上に足を置いて、もう一度振りおろそうとした時、背中をひっつかまれ引き倒された。

「…いい加減にしてくれませんかね、蜂須君」
「……壽山センパイ」

風紀の腕章をつけた、ぴしっとした姿で立っている壽山センパイは、俺を見下ろしてため息をついた。
「アレを処分するのは賛成ですが、手を出すと厄介なんですよ。九十九、あなたもちゃんと説明しなかったのですか」
「…する暇がなかったんだよ、うるせぇな」

雄利がやっと我に返って壽山センパイを睨みつけた。どうにも雄利は壽山センパイを敵視しているらしい。
俺を立たせた雄利は、そのまま俺の手をぎゅっと握ってきた。
――おー。なんだこいつ、くそかわいい。
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