アンサー



(第三者視点)


「…お前ら、俺が非処女になっても口きいてくれよ…」
「急に何言ってんの会長…」
「何言ってるんですか、会長…」

突然の会長のロストバージン宣言?予告?に役員たちは心配そうな顔を会長である九十九雄利に向けた。
「何かそういった予定が…?」
「…ちょっとな。ほらみろ、荻原(おぎはら)も怯えてんだろ…」
「荻原!?どうしたんですか、隅に丸くなって!!」
無口な書記、荻原の尋常ではない様子に副会長が驚き叫ぶ。

「……ご、めなさ…ご、ごめんな、さい…」
「な、一体何が…?会長…」
「そうだよ、何かあったの?」
「……」

無言は肯定。
心配した副会長が立ち上がり、荻原の肩に手をおいたとき――。

「よーぉ、ゆーうーりーちゃん♪」

生徒会室の扉が開いた。
そこに立っていたのは、身長184センチ、肩まではある銀色の髪をひとつにまとめている――言わずもがな蜂須だ。肩には大河をかついでいる。

「なな、なんですかアナタ!」
「あん?」
ぎろり、と高校一年生とは思えない眼力で副会長をにらんだ蜂須に、思わず後ずさる。
「えらい別嬪さんがいんじゃねえか、えぇ?雄利ちゃん、お前のオンナ?」
「僕は男です!」
「その上天然か」

くっくっと笑う蜂須は大河をおろすと、九十九のくびねっこをひっつかんだ。
「何かいうことがあるんじゃねえのぉ?ゆーりちゃん?」
「すすすすすすみませんしたっ!」
「そんだけかぁ?」
にたぁ、と笑った蜂須は、べろっと雄利の首をなめた。ぎゃっと声をあげた会計に、大河が慌てて事情を説明する。

「すんません!九十九さんの知り合いのひとなんで、怪しい人じゃないですから!」
「あやしいひとじゃないって…、会長が処女喪失とか言ってたのあの人のせい!?」
「…」
どちらかというと、九十九が奪った側である。
「目、そらさないで大河ちゃん!」
「いや、いやいや違います…」

「雄利ィ、お前なぁんであんなことしちゃったわけ?事情を説明しなさいよ〜」
「っ…すんません、全部俺らの勘違いで…」
「かーんーちーがーいー?」
びく、と九十九の肩が跳ねる。
「お前そんなんで俺んことマワしたん?あ?」
「す、すみませ…」

普段は俺様会長の九十九の怯えっぷりに、副会長がとうとう携帯をとりだし、風紀に応援を頼んだ。しかし、書記がそれを見、顔を真っ青にする。

「血…みる、こと、なる!」
「おぉ、荻原ァ。相変わらずカタコトだなぁ?かわいいぞ〜よし、俺が可愛がってやろうな〜お前も俺につっこんだんだし、同罪だぞぉ?」
「ひっ!」
「あー、怯えてるやつをいじめんのはなんて楽しいんだ…。ま、愛ある鬼畜ってやつだから、問題ねえよな?」

いいつつ、雄利の首筋に歯をたてる蜂須。さらりとかかる銀髪に、年齢にそぐわない色気。その雰囲気に、遊びの多い会計すら顔を真っ赤にしている。


「くくっ、そう焦るんじゃねえよ、ばぁか」
相変わらず、九十九を捕食するかのように体を撫でまわしている蜂須は、九十九の耳元で囁いた。
「お前がちゃあんと事情を話したら、ことによっては許してやろう。俺は寛大だからな?」
「ほ、んとですか…」
「あぁ、あと、これからお前らがと俺のこと総長じゃなく、お友達として見るなら許してやるよ」

にやりと笑う蜂須の言い分に九十九は目に涙がにじんだ。

「そんなんで…許してくれるんすか」
「うん、許すよ。だってお前らのこと好きだし」

風紀委員長の壽山が到着するころには、九十九と荻原がなきじゃくる生徒会室で、ほくほくとしている満足そうな蜂須が二人をはぐしていたのだった。


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