回想



最初は喧嘩、次は飯、その次は肩を並べて共闘。

それが俺の初めての友達とのなれそめ。イエーイ。

中学三年、2月。皆が皆、進学をまともに考え出すころ、もちろん俺――蜂須総司も、ばっちり志望校を決めていた。つーか。あと一週間で入試だっつーの。

「ソウさん、最近溜まり場あんま来ないけど、何してんすか?」
「あー」
ブックカバーをつけたままの高校受験の参考書をぺらぺらめくる。溜まり場の一番奥、窓際におかれた上等なソファーは俺が運びいれたものだった。
他にも冷蔵庫にカウンター、そのほかもろもろもだ。快適快適。


「抗争も九十九さんにまかせっきりっすし…」
「あー」
数学と国語はいいが、暗記科目はできがいい俺でも勉強しなきゃなんねえのがめちゃくちゃ面倒だな。

「聞いてます?」
「あ?」

溜まり場の旧倉庫。俺の家の所有物だから、かなり居心地良く改装してあるし、サツに目をつけられることもない。家じゃ家政婦がうっせえし、絶好の勉強場所だ。だからぴーちくぱーちく言われちゃ困る。
俺は黙ったまま、髪をかきあげて、さっきからうるせえNUMBERの幹部、山下大河をよびつけた。

「大河ァ。お前、うるさい。ちょっと来い」
「!はいっ!」
うれしそうによってきた大河をソファの隣に座らせて、参考書を閉じる。


NUMBERは俺がつくった不良チーム。
そもそも、銀髪に灰色の目ってだけでクラスじゃうきまくり、うっとおしがられまくり、修学旅行もちろん自主的にお休みだった俺は、中2にして不良デビュー、更にそのころ一番ぶいぶい言わせていた一匹狼の九十九雄利(つくもゆうり)を倒して、気絶して起きねえ雄利を手当てしてやって、起きた有利と飯くって。
二度目に会った時には、二人で調子づいてる族をぶったおした。

そっから、俺と雄利は大の仲良し(笑)になったわけだ。

九十九がいくつかはしんねえが、身長は178で俺よりはちっせえ。俺の容姿と性格から判断したのか、雄利は俺を年上だと思っているらしく敬語を使っていた。

最初はやめろやめろとどやしていたが、仲間が増えるにつれ面倒になり、最近じゃ黙認だ。ダチなんだから、タメにしろっつうの。



「日和(ひより)。冷蔵庫から青汁投げてくれ」
「ういっす、ソウさん」

年上と勘違いされている俺は、こいつらに一切素性を明かしていない。なぜなら、俺は最初会った時からひそかに計画していることがあるからだ。
ずばり、ドッキリ。

俺はこいつらが在校する中高一貫校を入試すると決めていたのだ。そのとき素性をばらし驚かせる。
なんともいいアイディアだ。ベリーグッドだ。うん。俺ドッキリの番組とか好き。やってみたいこといまんとこナンバー1。

「あんがとよー、ひより、お前もくるか?ハーレムハーレム」
ソファの反対側をたたいてやると、何故か日和は頬を赤く染めた。おやまぁ。不良のくせにシャイなこって。
「きたいなら十秒以内にこいや。いーち」
しゅば、と一瞬で距離をつめた日和は、大河の反対側に座ると、俺を見上げてきた。犬かこんにゃろーかわいいなくそが。


こいつらはタメか年上のくせに俺への態度が謙虚すぎる。初恋中かコノヤロー。

とりあえず勉強どころじゃねえから、青汁ぐびぐび飲みながら、大河のあたまをわしゃわしゃと撫でる。うっとり目を細める大河と、さびしそうな、ものほしそうな顔の日和。
こりゃドSの俺にとっちゃ心のオアシスだなオイ。

青汁を飲み終えてテーブルにアルミ缶を置けば、日和がぱっと顔をあげた。手があいたから撫でてもらえるとおもったらしい。あめえな、おい。俺は天下のドS総長様だぜ?

「あ…ソウさん」

そのまま空いた手でもったのは携帯。片手では大河の頭を撫で続ける。

「なんか言ったか?日和ィ」
「…なんでもないっす!」
ぎゅっと手をこぶしにして握る日和に俺のドS心がドキュンときた。あーかわいいかわいい。今すぐいじりたおしてやりてえ…。きゅんきゅん鳴かせてェ…。

「ばぁか。泣きそうになってんじゃねーよ」
「…!」
ぎゅっと抱きしめてやると、日和はほにゃりとにやけた。
「ソウさん…」
「おまえにだけ、特別にいーこと教えてやるからちょっとこいよ」

日和の顔がぼっと紅くなった。
大河が少し不服そうな視線を俺によこす。
あー同時に二人をいじめんのって楽しいなオイ。

「ソウさん、ただいま帰りました」
「おう、おっかえりぃ〜九十九っくんっ」
「なんすか、そのきもい呼び方…」
「冷たいね〜雄利くんは。日和みたいに甘えてこれんのかこんにゃろ。な〜ひより?大河?」
「うぇ!?」
「えーと」

幹部とはいえ、雄利よりは下っ端の二人は目に見えてうろたえた。雄利は雄利で、俺をじっと見てくるその眼にはわずかに熱いものが含まれている。

「雄利、青汁とって」
「何杯のんでんすか…ったく、健康的だな」
「いいじゃねえか、健康的で」
健康であることこそ人間が人生を楽しむうえでかかせない一つだろうが。
だから俺は酒は飲むがたばこはしない。うまくねーしくせーし服ににおいつくし。

「…最近、なんか動きが不穏なんすけど。抗争のたびになんか…探られてるみてえで。ソウさんは滅多に顔ださねーし」
「あ?そんなもん仕方ねえじゃねえかよ。俺だって生活があんだから」

青汁をすすっていると、雄利が俺を腕をつかんだ。

「真剣に言ってんすけど。俺。…あんた、最近俺になにか隠してる」
随分前からだけどなー。

「そう思うのか?」
「ああ…」
「くくっ、そのうちわかる。俺は今最高に大変な時期だからよー、ここにこれねーのは許したまえよ」
言いつつ頬にキスしてやると、雄利は「ギャッ」と色気もくそもない声をだして尻もちをついた。

「なにすんすか!」
「なんだ?やぁだったのか?」
「いやっつーか!あんた、自分の価値を雑に思いすぎっつーか…んなこと、乱発すんじゃねーよ」

おお、敬語が崩れてきた。

「雄利くんたら真っ赤になって、きゃーわーうぃーぅい〜。食べちまうぞこんにゃろう」

ぺろりと舌舐めずりをすると、大河と日和が真っ赤になっていた。雄利もか。
いやいや、雄利君。俺は十分自分の価値わかってんぞ。その上でつかってんだぞ(笑)




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