03



「え!?な、何も覚えてないんすか!?」
「…(こくん)」

俺の同室者の不良の人は山下大河(やましたたいが)先輩。俺のいっこ上だった。本当は同じ学年で同室になるらしいんだけど、俺はあまりらしい。

昔俺と知り合いだったみたいだけど…思いだせない。ていうか、なんで敬語?
「まさか、あの時中学生だったなんて…あ、ありえねえ…!あの色気で…!?つーか、今高一ってのも、ありえねー…!つか、記憶喪失…そうか、そうだよな。でないと俺会った瞬間殺されてるし…」
「…?あ、の」
「ははははい!」

…不良に吃られる俺って…?

「しり、あい?」
「え…まぁ、その、はい」
ごにょごにょ肯定された。
「おれ、きおく、ない…。むかし、知り合い…あうと、もどる、かも…言われた」
お医者さんが昔の記憶を呼びもどすきっかけは色々あるけど、会ったことあるひととか、仲良かった人に合うのは結構効果あるって言ってた。

「ええ!?」
何故か真っ青になる山下先輩。なんで?

「…せん、ぱい?」
「蜂須さん」
「?」
「髪、染めません?」
「…ぇ?」
なんで?

「ほら、その銀髪じゃちょっと浮かない?浮いちゃわない?」
「…」
確かになんか、近寄られなさそう…けど…。
「カラースプレーならすぐおちますし!登校する時だけでいいんす!」
「…」
なんでこの人こんな必死なんだ。

「友達とか、ほら、できないかもだし、あの」

ともだち。
何故かその言葉に心臓が跳ねた。

「…ん、そめ、ても、い」
「マジすか!?」
なんでそんな喜んでんの。

「じゃあ、ちょっと買ってきます!そのあと一緒に校内まわって飯食うってことでいいすか!?」
「……ん」
なにはともあれ。
とりあえず友達、できた(知り合いらしいけど)のかな?

「…(へらっ)」
「!!」
思わずにへっとしてしまった。山下先輩が何故か股間を抑える。…トイレ?
「…せん、ぱ。といれ?」
「ぎゃー!きょとん顔やめっ、ちょ、いってきます…!あ、その前にトイレ…」

どうしたのか、よくわからないけど、とりあえず。いい人みたいでよかった…。


そのあと、山下先輩が買ってきたスプレーで髪を染めたらすごく…もさっとなっちゃった。前髪長くて、髪が黒くなったせいで顔がみえにくい。
校舎見学に行ったら、また壽山先輩に会ったから、髪を染めたことを言うと、風紀的には助かるけど、地毛なら別によかったのにと言われた。
…あの人優しくて好きだ。

「…まえ、…かみ」
切りたい、んだけど。前の自分が切ってないってことは、だめ、なのかも。
「あ、飯できました〜」
「ぇ…つく…?」
「はい、俺が作ったんです…!あの、食べてもらっていいですか…?」
頬を染める山下先輩。
…よくみたら、癒し系?小さいし…。

思わず頭わしわししてると、なんでかわからないけど泣きだした。
「え…せ、んぱ?」
「うっ…ひぅ……!そ、そーちょ…っ」
そーちょ、ってなに?え?
「なん、で?なく?」
「ひぅ、ぅぁあああ!!」

最終的にぎゅーってだきつかれた。仕方ないからあやすみたいに背中ぽんぽんたたいてあげると、鼻をすんすんいわせてから、ごめんなさい、と謝られた。なんで?

「…ごはん、さめ、る…」
「ずびっ、は、はいっ」
一緒にもしょもしょご飯たべて、それから俺はお風呂に入って寝た。カラースプレーは頭洗うとおちちゃうから、明日また染める。

「あの、えと…おやすみっ」
「…おやすみ、なさい」
「…」
「…」
なんでか俺の部屋に来て、入口でもじもじする山下先輩。

「…?」
「あ、あのっ、俺っ、本当、すみませんでした!」
…この人。記憶失う前の俺に何したんだろ…。
「けど俺っ、そう…蜂須さんのこと大好きでっ、だから…もっと一緒にいたいっす!怒ってくれていいから、だから…!」
「…」

また泣いちゃった山下先輩は、昔の俺にすごく罪悪感をもっているようだった。

「…ん」
頷いて、先輩の腕を引く。ひざのうえにのせて、ぎゅっとしたら、先輩も俺にぎゅってし返した。
「…記憶、戻ったらきっと、俺のこと、き、きらいに、なっちゃいますよ、ね…」
「…」
「すみませ、お、れ、でも…きらわれたく、ないっ…!」

…髪を染めるのも何か関係しているのか、それはわからないけど。
「かわい…」
先輩がめちゃくちゃ可愛いってことはわかった。

「え、あの…?」
真っ赤になった先輩のおでこにちゅーすると、ますます真っ赤になった。
「かわいい」
「っ!?は、え!?ま、前はそんなこと言われたことないっすよ!?」
昔の俺がどう思おうと超可愛い…!

そのあと先輩を抱き枕代わりにして寝た俺は、朝起きて、先輩の股間が何故か膨らんでいることに気付いた。
「…せんぱい、これ」
「ギャーーー!!」
わし、と掴むと部屋を飛び出して行ってしまった。なんだったんだろうか。


(36/60)
←prev next→


[Top]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -