02



退院した俺は、それほど休む暇もなく学園への入寮日を迎えた。学園までは母親がついていってくれて、理事長に記憶喪失もろもろ説明してくれるらしい。
「総司、ここで待っててね」
「…」
頷いて、でっかい学園のでっかい校舎のでっかい理事長室の扉の前で俺は荷物両手に立っていた。

それにしても、もうかれこれ数十分たつが母親が出てくる気配がない。


「君、新入生か?」
「…」
きゅっきゅっと綺麗に磨かれた床に音を鳴らしてやってきたイケメンは、俺を見て眉をひそめた。
「…その髪」
風紀の腕章をしているからきっと風紀委員かなにかだ。

「…じ、げ、です」
「地毛?…クウォーターか何か?」
俺はまだってうなずいた。先輩らしいその人は、眼鏡を押し上げてにこ、と笑った。
「もしかして、蜂須君かな?」
「…」
もう一回頷く。

「やっぱり。資料に目を通したんだけど、一人目立つ子がいるな、と思ってたんだよ」
「…」
それは問題児的な意味でですか。
「それで、もしかして保護者の方が理事長室に?」
「…は、い。母親、が」
「そうですか。…ところで、蜂須君は生徒会の役員と面識がありますか?」

生徒会…それはここの?

「…しら、ない」
「…それはおかしいですね」

何がおかしいんだろう、と思ったけど、風紀の人が怖い顔をしていたので聞くのはやめた。

「あら、こんにちは」
「こんにちは、蜂須君の保護者の方ですか?」

二人の間に変な空気が流れていると、母親が出てきた。
風紀の人は愛想よく挨拶している。

「僕は風紀委員長の壽山幹彦といいます」
「?」
漢字がよくわからなくて俺が首を傾げていると生徒手帳を見せてくれた。

「幹、彦せんぱい」
「はい?」
「よろしく、おねがいします…」
とりあえずちゃんと挨拶しておいた。


それから俺は先輩と寮に行った。凄く広い部屋だけど二人部屋らしい。
ふたつある部屋の片方から出てきた人は不良みたいだった。ピアスがたくさんついていて、髪が赤い。

「お…、ぁ」
なんか驚いてる。怖い顔してる。え、俺殴られるのか?


「すいませんっしたぁああああああああああ!!!」

「…!?」
な、何!?何が!?
急に不良が土下座してきた!


「すんませんすんませんすんません違うんです本当に俺ら騙されてて誤解して本当マジすんませんっしたァああああああ!!!」
「…」

何が?
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