02
俺が生徒会長になった数ヵ月後。
特に進展もない(おもに俺がうじうじしていたからだ。三和を見るとどうしてもあがってしまう)そんなとき、編入生がやってきた。
水戸武光。
彼はなんと、三和の弟だと言う。
これは俺にとって大きなチャンスだった。好きな食べ物とかその他もろもろ訊いて、三和をよく知るチャンスだと思った。
――なのに。
まさか、こんなことになるとは。
「…花房、お前俺のこと好きだったのか」
「!!」
風紀委員室に、用事があってやってくると、三和の弟がいて。しかも何故か、三和は俺のことを好きだとか言ってくれていて。
「う、ぁ…」
やばい、やべえ、どうしよう。
今まで努力してきたかいがあった――のか?
「兄ちゃんっ!だめだってば!花房より俺だろ!?」
「…」
三和にへばりつく水戸。三和はとても、困ったような顔をしていた。――弟と比べたらきっと、俺なんて。
無意識に耳につけているピアスに指が。
街へ出た時、たまたま見かけた三和が、店で手にしたもの。素の三和にはきっと似合うだろうピアスを、俺は三和がいなくなった後購入した。
ストーカーじみているとか、自分でも自覚はしている――だけど、つながりが少ない、目の前にいる三和との、つながりが。
なんでもいいから、ほしかった。
「昴、武光を教室まで送ってやってくれないか(こいつマジうぜえけどかわいいから危ないからマジで、たのむわ)」
「…わかった(テメエ花房とのこと後で詳しく訊かせろよ)」
「なっ!兄ちゃん、俺」
副委員長が水戸を連れて風紀室を出ると、生徒会のメンバー、さらに何故か風紀委員たちもそれについて出て行った。副会長は俺に「一世一代のチャンスですから、絶対モノにしなさい」と耳元で囁き、にやっと悪く笑った。
親衛隊がみたら卒倒しそうだ。
そういうわけで、今、風紀委員室には俺と三和しかいない。
「っ、あ…み、みわ…」
無表情の三和に、緊張する。やばい、俺今ちゃんと、三和に好きになってもらえるような、俺でいられてる…?
「…お前さあ、今日初めて気付いたけど」
「ッ…!」
いつもと違う、本来の三和の話し方。口調。色気の含んだ声色。
「お前、昔会ったアイツ、だろ?」
にや、と笑いながら眼鏡をはずした三和に、腰が砕けた。
エロすぎる…。
「ッ、その、俺は――」
「俺様会長なんて呼ばれるまでになったのってさ」
黒い髪の鬘をはずせば、燃えるような赤色の髪がのぞく。髪をかきあげた三和は俺に近づき、くいと顎をもちあげた。
「ち、近っ…」
「あ?俺はお前のこと好きなんだから当たり前だろうが」
「ッ――…」
「花房、お前はどうなわけ?」
にやにや笑う三和は、以前会った時よりも髪が長い。思わず、手のひらでわしゃわしゃすると、三和が楽しそうに笑った。
「なぁ、早く言えよ」
昔みたいに、べろりと唇を舐められた。
顔が、あつい。
「俺が好きだって、なあ?」
そして俺の意識は途切れた。
「…あれ、マジかよ…刺激強すぎた?…ククッ、かーわいいなぁ、花房」
もう食っちゃおうかなぁ、なんて三和が愉しそうに言ったことは、俺は知らない。
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