03



聞いてくれ、皆。
俺様は馬鹿だった。

「なあ、聞いてくれ、昴」
「あ?な、なに」
風紀委員室にも関わらず、素で話しかけた国光に昴はぎょっとした。現在昨日の会長との素敵な出会いから夜が明け、朝。早朝の風紀の見回りの時間だが、風紀室には何人か風紀委員が残っていた。
一人残らず、俺の方を見て驚いた顔をしているが知ったこっちゃないぜ。多分もうばれてるし。

「俺、猫かぶってることバレたみたいなんだ」
「…………えー…、誰に、ばれたんだ?」

ええ!?風紀委員長!?という下っ端の声は無視だ、無視。
意外と昴のリアクションは小さい。
「花房」
「…あー、マジか」
「まずいか?」
「いや、大丈夫…だとは思う」
「ん?」
「あいつだって…」
昴が何か言いかけた時、風紀室のドアが開いた。入ってきたのは武光だ。
「兄ちゃんっ!」
きやがったなこんちくしょう!

「武光、おいで」

にっこり笑う俺マジきめえ。しかし仕方ない。どんだけいやだいやだと思っててもなんか無理だ。どうしても、思いたくもないことを思って、行動してしまう。
武光を抱きしめた俺は、赤みがかった茶髪をわしゃわしゃと撫でまわした。優しげな委員長萌え!とかもだえてる下っ端は無視だ、無視。
「どうした?何かあったのか?」
「う、うん…会長が」
「ん?」
「生徒会のみんな、俺が兄ちゃんの弟だってわかってから…すごく質問ばっかりしてくるんだ」
「…そうか、みんな武光がかわいいんだな」
思っても見ないことが口をついてでる。

「そうじゃなくて、にいちゃんのなんだよ?」
「ん?」
「にいちゃんの嫌いな食べ物とか、嫌いなタイプとかきいてきたんだ」
アレーそれは俺が生徒会に嫌われているということでファイナルアンサー?キライナモノをけしかけてやろうっていう?あは。俺様にそんなに強気でいるとは…流石俺様の(将来の)嫁(+役員)!

「どうしよう…」
「そもそもどうして、仲良さげだったんだ?」
「俺が兄ちゃんを、三和国光を探してるって言って
「ああ」
「そしたら知り合いなのか?って会長が」
「うん?」
「弟ですって言ったら兄ちゃんの昔の写真とかないのかって言われて」
「…それで?」
「家族写真みせてあげた」
どうやらばれたのはここからだ。ド畜生。このくそ弟め!かわいいぞ!じゃなくて!忌ま忌ましい…!

「そうか」
いや、そうかじゃねえよ俺。
「兄ちゃんは会長が好きなの?」
キタ。
こいつは美形が好きだからいまだに陥落しない会長が俺を気にしているのが気に食わないらしい。
「そうだなあ」
「そうなの!?」
エッ、俺そうなの?つか、何言ってんの?
「兄ちゃんはお前には嘘ついたりしないよ」
いや、つけよ。
「確かに俺、花房のことは好きだよ」

…マジで?


――ガッシャアアアァァアアン

「ん?」
なんか変な音がすると思ったら風紀室のドアのところで生徒会役員が縺れ合って倒れていた。どうしたお前ら。
「ななっ、なっ」
「ちょ、会長!急に転ばないでください!」
あ、副会長が会長殴った。
「あ!会長、それに皆」
おい、弟よ、何故会長は皆の中に含まれない。

「ていうか、やっぱりですか」
くいっと眼鏡を押し上げていう副会長。やっぱりってなんだ。
「しょーじき早くくっつけやーっとか思ってたし」
は?何言ってんだこのチャラ会計。
「付き合ったらどうですか?」
いや、まじめになんなの書記。

「な、な、なにいって、やがるてめえら!」
ところで花房、そろそろその尻もちついた状態なんとかしろよ。
「大丈夫か、手を」
「ッ――!!」
近寄って手を差し伸べてやると、花房は真っ赤になって、あわてだした。副会長が面倒臭そうに花房の手をつかんで俺のに重ねる。いや、そんなことしなくてもテメエが起こしてやれよ。
「っ、あ…三和」
「大丈夫か、けがはないのか」
「あ、ああ…」

…なんだこの可愛い生き物は。うん、タチっぽい奴が好きとか言ったが…今それとかけ離れた花房がとんでもなく愛しい。
これが恋というやつか!?
「兄ちゃんっ!」
「っ、なんだ武光」
「兄ちゃん…会長と付き合うの?そんなの嫌だよ…」
「あ?(何をこいつは可愛いことを――じゃなくて!)どうして嫌なんだ」
「だって、俺!兄ちゃんが好きなんだ!」
「…武光、それは家族としてだろ(うそつけテメエが好きなのは美形を侍らせることだろうがボケ)」
「違うよ!俺はずっと兄ちゃんがすきで…」

あー、でっかい目からぼろぼろ涙ながしちまって。ところで今、まだ7時半なわけだが…。
「……そうか」
あー……、何これ。どうすりゃいいの。
「兄ちゃんは!俺より花房がすきなの?」
「え」

そりゃあ、えっ、そりゃあ…えっ、どっちだ俺!家族愛が邪魔をして本当の所を考えられない。
「っ、三和は渡さないぞ!」
ってオイー何抱き寄せてんのよ、何ですか、嫉妬ですか花房。くそ可愛い。マジで。
「違う!兄ちゃんは俺の兄ちゃんだっ!世界で一番かっこいいんだ!」
エーお兄ちゃんそんなふうに言われたらすごくうれしいけども…じゃなくて!くそ、俺の家族愛マジどっかいけ!邪魔!
「昴、助けろ」
「無茶言うな…」

誰かこの事態を収拾してください。俺様が頭下げるから。






(15/60)
←prev next→


[Top]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -