四日目 午前




「……」
9月6日木曜日。
寝起きで機嫌が悪い明は、ぼうっとする頭で時計を睨みつけた。まだ朝6時。普段から美容のために規則正しい生活を送っている明としてはこれがいつもの周期だ。
「はあ…」
今日は瑛と話さなければならない。それだけで気がめいる。
「もう携帯ほかそかな…」
会長以外からの着信の数に、明はぼやいた。


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引きこもり四日目
9月6日 午前

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「俺様の勝利だな!」

とうとう今日、明と話をする機会を与えられた瑛は、ぎりぎりと歯がみする役員たちを前に得意げな顔をした。
「うるさいですよ、宇都宮はきっとあなたを完全にふるために話すつもりなのです。鬱陶しいことこの上ないですからね」
「そおですよお、すとぉかあチックだったしい〜」
「し…ね!」
上から副会長、庶務、書記の猛攻が続くが、会長はめげない。

「はっ、知ったことじゃあねえなあ。一度でてくりゃこっちのもんだ」
「ま…まさかアナタ!宇都宮を縛って部屋に監禁しあわよくばあんなことやこんなことをするおつもりですか!」
「エロい写真撮って脅したりとか、変な衣装着せて無理やりポーズとらせたりとかするつもりなんですかあ!?」
「…へ…んた、い」
「それはてめえらの願望だろうが!!」

ちょっと役員の将来が心配になった瑛だったが、自分自身、宇都宮を閉じ込めて自分以外と接しないようにしてしまいたい気持ちがある。それくらいには好きだ。

「宇都宮が…あの、たまに関西弁でしゃべって急いで訂正してばれてないと思って安心したのかへらへら笑ってる顔が超可愛らしい宇都宮が…あなたのものになるなんて…耐えられません。そんなことに成る位なら…今あなたの局部を切り取ります」

「寝起きに思わず『うっさい!起こすなボケ!』とか口走っちゃって、そのくせ二度寝の後起きてきたら『んぅ…?おはよお』とか、とぼけた顔で言っちゃうとこがちょお可愛い明ちゃんが…!会長のものになるなんてやだ!副会長!手伝うよ!得物は何にする!?包丁!?鋏!?カッター!?」

「…し、ね!!!」

副会長と庶務がぎゃあぎゃあ言っているうちに書記が鉛筆を思い切り会長の股間めがけて振り下ろす。

「うわあぶね!」
「あ、こら!鉛筆じゃ貫通しませんよ!」
「加担すんな馬鹿!」
書記がぶるぶる震えながら会長に掴みかかるので、瑛も抵抗しないわけにはいかない。
「う、つのみ、や…おれ、の…」
「お前のじゃねえよ」
「星村のものでもありませんよ、死になさい」
「しーねー!」

三人が飛びかかってくるので星村はそれはもうアクロバットに逃げた。

「あ!卑怯者!」
「るせえ!俺は――宇都宮に会うんだよ!!」
「!!さ、せな…いっ!」
ここで書記が意外な特技を発揮した。
「てめ!足はや…」
「50、め、とる…五秒、台」
「ぎゃっ」
誰かにぶつかって、会長がとまるとここぞとばかりに書記が追いかけ、羽交い絞めにする。

「ナイスです!」
背後からは包丁片手に副会長。
「わんちゃんないすう〜さーて、きっちゃおっか〜」
そしてカッター片手に庶務。
さすがに会長も冷や汗を流し始めた時――。

「…何しとん、お前ら」

会長がぶつかった相手――宇都宮明が口を開いた。

「…宇都宮…」

黒髪になって、小学生のころの印象がよみがえる。会長が頬を緩ませた時、体を押さえつけていた書記が離れ、明にとびついた。

「!」
そのままぎゅう、と抱きしめた書記に明はいぶかしげな顔をした。
「…何、まじめに仕事しとういうとったのに、なんや、何しとん」
「…す、き!」
「あ?」
ぎゅうぎゅう抱きしめてくる書記に明の眉間にしわがよった。

「悪いけど、俺寝起きで気分最悪やねん、できれば、会長と二人にしてくれん?…そうでないと、俺、あたんしそうや」
「あたん…?」
聞きなれない方言に、役員全員が首をかしげた。
「それに、俺に嫉妬させたいんかしらんけど…今まで仲間やったんを急にゴミほかすみたいに…、俺の気持ちとか、よう考えたんか?あ?」
「ほかす…?」
「……」
「…」

ため息をついた明は、書記をひきずり、会長が走ってきた廊下を歩きだした。

「生徒会室、まだ俺はいれんの?」
「!ああ!」
うれしそうに返事をした会長に、明は不覚にも可愛いな、と思ってしまった。





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