生徒会長の憂鬱




「…おい、女郎花」
「ん?なんすか、カイチョー」

生徒会室ではいつも通りメンバーが仕事をしている。いつもと違いはない――ただひとつを除き。

「…お前今日は、け、ケーキ買ってねえんだな」
「ケーキ?あー」

そう、いつもは会計の女郎花篤士が、パティスリーideaで買ったケーキを冷蔵庫に保管していて、生徒会皆で食べたりするのだ。しかし、今日は放課後になってもそれがない。

「「ぼくらも気づいてたよー」」
「なんでないの?」
「いつもかってたじゃん!」
双子の生徒会補佐達が騒ぎだし、副会長もうなずいた。
「確かに…今日はないのかな?」
にっこり笑う副会長もどこか残念そうだ。

「つーか、いつもどこで買ってんだよオマエ」
「は!?なぁに、会長知らないの?この学園ケーキ屋できたでしょ!?噂になってたじゃんか!」
女郎花は驚いて机をたたいた。

「あ…?知らねえ」
「「僕らもー」」
「…驚いたな。ケーキ屋なんてあったのかい?」

「えー…」

確かに、ケーキ屋建設は理事長が計画したことで、篤士が知っていたのも従兄弟の蜜柑がそこで働いているからだ。
生徒会は基本、昼は食堂ではなくデリバリーであるし、夜になればもうケーキ屋はしまっている。その上、このメンバーときたら…。

「生徒会権限でケーキ屋無料券配布してもらったでしょー!!?」
「「え、うそー!!」」
配布してもらったケーキ無料パスをどこかにやったらしかった。副会長は机をがさがさして、そのピンクのカードを取り出した。

「これ?」
「そーそー!俺今までそれで買ってたの!」
「じゃあなんで今日はねえんだよ」
会長が不機嫌そうにぼやく。

「そりゃ俺が――えと」
ここで、九条にケーキ無料パスを渡したなどととても言えず、悩む。
「俺甘いのきらいじゃん」
普段買ってきて冷蔵庫に入れていたのは生徒会のお茶用にだ。ちなみに、篤士には蜜柑が甘くないスイーツをつくってくれていた。

「今まで食ってたろ」
「それは甘くないやつー。でもそれもうないから」
本当は作ってもらえるが、もう行くつもりもなかったので面倒に思いながらも一蹴する。
「っていうか、会長たちやけに言うけど、なんで?」

「だって美味しかったじゃないか」
にこやかに言う副会長。
「「そーだよー」」
「またたべたーい!」
「種類もいろいろあったし!いっぱいたべたーい!」
食べたい食べたい言う双子。

「…確かに美味かった」
そしてデレる会長。

そんな四人に、篤士は驚く。まさか生粋の金持ちの四人の肥えた舌でも満足させてしまうとは。
流石、日本大会の優勝者。世界大会第7位。

「あは、ざーんねん。欲しかったら買いに行けば――あ、今日はもう売り切れかな」
「そんなに売れてるの?…美味しいもんね」
副会長が残念そうな顔で浮かせた尻を椅子に戻した。どうやら行く気満々だったらしい。
「昼休みもすーぐに売り切れちゃいますよ。放課後も」
「んなに人気なのか」
「甘さ控え目のもあるし、種類も日替わりローテーションですからね。値段もお手ごろで400〜500円くらいですし」

「安すぎだろ!」
会長が何故かそこでキレた。
「んなこと、俺に言われても。みかんちゃんに言ってくんないと」


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