02



 
 俺、女郎花蜜柑は、27歳独身。昔からなぜか髪を切ると不評だったので、肩くらいまではある男性では長いほうの髪です。
 ゆるく天然パーマがかかっていて、ウェーブした髪は普段、殆ど後ろに流してオールバックにし、低い位置で一つに結っているのですが、接客の時は前髪だけ下ろします。
 眼鏡は遠くがみえないのでかけます。かなり目は悪くて、近くないと見えません。

 そしてもう二つくらい、俺の最大の特徴。

 そのいち、ネガティブ。
 
「…お前さぁ、相変わらず一日ケーキ50個くらいしか売ってないんだって?」
「……はい」
「ここ、従業員職員入れたらどんだけ人数いると思ってんだよ。バイトの奴らがずーっと愚痴ってんぜ。業務後行ったら一つも残ってないってよお。教師もそうだけど」
「…すみません理事長、ご、ごめんなさい…」
「いや、責めてねえから…悪い」

 理事長がバツの悪そうな顔をしました。ダンディなお兄様なこの理事長は、この学園でも人気があります。

「で、でもあの、売れ残ったりしたら、その…」
「そんときは、コックなりウェイターなりに配っとけ。あいつらお前の作るもんなら喜んで食うって」
「ふえ?…えぇっと…え?」
「わかったか」
「は、はいっ。じゃあ、えっと、お昼休みと放課後と、あと…職員さんようにいくつか作るってことで、えと…」

 大慌てで頭の中で考える。それなら小麦粉と卵と生クリームの発注買えないと。一応生徒さんのところで、そういう流通業してる方がいて、そこから学園が安く買い付けているのだけれど、俺のケーキショップのケーキは日替わりでケーキの種類が代わる。
 
 いまのところ、30種類以上をローテーションしていて、一日数種類ずつ。バウンドケーキやクッキーなんかも、少し工夫したりして毎日違うもの。同じのはアイスとか、あとはプリンとか。

 だから、だいたいの量を考えて発注していて、それも定期になってるので、発注数を変えるとしたら来月からかなぁ。…もとでは学園が払ってくれていて、もちろん売上から材料費はわたしてる。それだけでも結構儲けているのに、その上給料と寮、あとカードキーで買い物のお金も負担。
 ちょっと、良い暮らしすぎて…不安です。
 最初お話もらったときは、なんかの詐欺かとおもいましたし…。

「それと、値段もちっとは考えとけよ。坊ちゃん相手の商売だぞ。ワンコインで帰るとかマジねえよ」
「え…でも、値段高くするとサイズおおきく、しなきゃだし、えと、そうすると、親衛隊の子たちが…いろいろ食べたいから小さめの方がいいって、こないだいってたから、いろんな種類買って食べられるようにと思ったんで…ご、ごめんなさい」
「…いや、いいけど」

 正直、俺は売上なんてどうでもいいもん。ケーキたくさん作れれば、たのしいし。食べたら、おいしいし…いい。
 どうせ、結婚もできないし…。

「…なにうじうじしてんだ。お前、マジでそうしてると、高校のときのまんまだな」
「うっ…」
 実は、理事長は俺の一個上の先輩だった。28歳相応の容姿。けど俺は…。
「これは、病気みたいなもんで…」

 俺の特徴その二。
 女郎花家は、結構な資産家系で、会社もたくさんあって、すごいんだけど…ちょっと欠陥がある。
 それは、その血筋は発育が何歳かでぴたりと止まってしまうこと。

 俺の父さんは、19歳で、俺の兄ちゃんは、26歳でとまった。そして俺は、18歳で止まってしまった…。
 身長がのびきっていて助かったけど(177センチ)、親戚の中には、幼稚園で止まってしまった人もいる。…俺のおじさん。結構大変見たい。中身だけは一応成長してるらしいけど…。悲惨だ。

「知ってる。だからお前、ちゃんとかくせよ。身の上」
 女郎花家の人間だとわかると、周りは露骨な態度をとる。だから俺は学園で「みかん」という名前しか名乗っていない。
「し、心配してくれてるんですかね…?あ、ありがとうございます。あ、違ったらごめんなさい!差出がましいことを!」
「…最近変わったことはないか」
「えーと…」
 そういえば、従兄弟に頼まれて誕生日ケーキをつくったことを思い出したが、そう変わったことでもない。
 一応ホールケーキの予約は二日前までなら可能なのだ。

「特にないです、えーっと、今日は新作のケーキ味見してほしいんですけど…」
「食べる」

 新作のブルーベリーとヨーグルトクリームのミルフィーユは中々評価がよかった。




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