幸村へダイエット宣言

「ダイエットします」

精市のお宅にお邪魔していつものようにくつろいでいる精市の目の前で私は正座になり、宣言した。
春になるとご飯がおいしくて気がつけば食べてしまう生活をしていた。
母さんも私の食べっぷりに気を良くしてかジャンジャンおいしいご飯作ってくれたし。
そして私は忘れていたのだ。その代償がどこに来るかを。

「ふーん、確かにお前太ったもんね」
「そこは“ももこ、今のお前でも俺は好きだよ(キラキラ)”じゃないの!?」
「理想の彼氏像を俺に押し付けないのでくれる?迷惑だよ」
「うう、さくらももこ。彼氏の冷たさに死にそうです。」

淡々と精市は私の傷を抉ることばっかり言う。
て言うか精市もっと私の事に興味持ってもよくない…?

「まぁ、応援だけはしてあげる。なにやるの?」
「え?」

読んでいた本をパタンと閉じて精市は、私のほうに向き合った。
突然の言い回しに私は正直驚いた。

「…もしかして何も考えてないの?何も考えてないのに俺に堂々とダイエット宣言したの?」
「い、いえ、幸村様に応援していただけるとは…一応ビリーズブートキャンプしようと思ってたんだけど」
「古いね」
「中古で見つけたの」

ダイエットしようかな―と思っていた時、ブックオフで中古になっていたそれを見て私は決意したのだ。

「じゃぁ次は目標を立てなきゃね」
「…、なんだか精市やる気だよね」
「彼女ががんばるって言うんだから俺は応援したいんだよ」
「…!!精市!私惚れ直しそうだよ!」

「で、何キロ痩せるつもり?」
「とりあえず太った分、3キロ減らそうと」
「期間は?」
「期間!?」
「だらだら続けてたらなし崩しになっちゃうからね。」
「じゃ、じゃぁ来月身体検査があるんでその時までには痩せたい…かな?」
「じゃぁ、一ヶ月後だね」

そう言ってサラサラと、何処から出したのかわからないノートに精市は何か書いていく。
怪訝に思ってわたしは口を開いた。

「…精市さん、そのノートは?」
「君のダイエット日誌だよ?その日その日を記録して行動を振り返って反省するために作っておこう」
「精市…」
「何?」
「面白がってるでしょ?」
「…そんなことないよ」
「うっそだー!今目ぇキラキラしてるもん!!真田が赤也のせいで水浸しになってるのを見てた時と同じ顔してるよ!めっちゃわくわくしてるでしょ!」
「…気のせいだよ。彼女がブートキャンプやり終えて、結果体重が変わらずムキムキになってめそめそしてるところ想像なんてしてないから」
「何その嫌な想像!!」
「以前赤也とブン太が面白がって挑戦したことあったんだけど見事に脂肪が筋肉になったんだ。体重は逆に筋肉で増えたし」
「なんで今まで黙ってたの!?」
「ふふ、そのほうがお も し ろ い でしょ?」
「あ、悪魔や、悪魔がここにおるでぇ…!」
「それにめそめそしているももこを俺が慰めてあげるっていうのも楽しそうだったし!」
「こ、この鬼畜眼鏡!!」
「え?俺眼鏡かけてないけど」

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